白刃可踏。──『藍宇』其の是拾潑
2017.05.15 Monday
5月13日を以て『藍宇』と出逢って8年が経ちました。
諸事情あって当日に記事を上げることができなかったんですけれども。
それが気に掛かっていたせいか昨日の明け方、「夜の渋谷で胡軍さんに遭遇して普通話と英語ちゃんぽんで話しかけたんだけれどもいとも冷淡な目で一瞥され洟もひっかけられずあしらわれて死にたくなる」的な悪夢をみまして。
やっぱこれ記事書かなきゃイカン!と悔い改めまして。
昨年の5月13日に「魔の五月」ということを書きましたが、ひとつ前の記事の事件にしろ、こと『藍宇』をめぐっては正しく五月は魔と化します。
8年前のいまじぶん、ネットで『藍宇』の感想文はすでに渉猟しつくしていました。
いざ『藍宇』のDVDを密林さんで購入するにあたっては、しかし、購入した方のレビューはほぼ読みませんでした。
『藍宇』を鑑賞したのちにネガティブなご意見(たとえばこれなど)も読んでみたんだけれども、レビュアーさんがネガティブな要素として列挙されていることのどこがどうだめなのか、『藍宇』を経た自分には、ぜんぜんわかりませんでした。
既にそのぐらい、取り返しのつかない勢いで『藍宇』という病に罹患していたのでした。
2009年5月13日、14日と、二日続けて『藍宇』を鬼のやうにリピしたあげく、
「とりあえず『藍宇』は無かったことにしようと思う」
とかっつって無駄な抵抗を試みたのが本日、5月15日。
ま、これはこれで顧みれば一種の記念日であるなあと思います。
賛否というならば、『藍宇』が日本で公開された頃なんかは今の比では無いくらい、いろいろあったんだろうなあと思います。
「誰がなんと言おうとこれがいいんだだいすきなんだ」と一旦思い決めた対象についてはとことん惚れぬき褒めぬく人間ですから、日本公開当時に『藍宇』に病んでいたら、そしてもし上記のようなネガティブな論評を目にしていたら、さぞ殺伐たる、喧嘩上等なことになっていたでしょう。殺伐を避けるべくだまっていれば自分のなかで、「おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざ」みたいなことになっていたにちがいなく。
だから出逢いの時期って大事。
だから『藍宇』と私は、『藍宇』というムーブメントのほとぼりがさめた2009年に出逢うように、どっかの誰かが粋に取りはからってくれたにちがいない。
いまさら乍らそんなことも思うわけです。
そういえば私、密林に『藍宇』のレビュー書いていなかった。
DVDを観たあと自分なりの感想文を書くだけで3ヵ月近くかかっちゃったし、書きあげてみれば「腹ふくるる」がいよいよ増進して、んじゃもういっそのことブログ作りますかあ!みたいなことになって現在に至ります。
改めて、ここ最近の密林『藍宇』レビューなんか読んでみましたら、こんな論評がございました。
主演俳優の良さに比して、ランユー役の若手が、どうも・・・・。
主人公がのめり込むだけの、美貌かあるいは官能性が欲しかった。
最初に観たときは私もそう思いました。
ですが、二度三度と『藍宇』との逢瀬を重ねていくうちに、そういう印象はころりと覆りました。
そのとば口がまさに8年前のきょうだった。
二度三度、十度二十度、いえ百遍だって観たくなるか、「一度でたくさん」になっちゃうか。こればっかりはもう、胡軍さんの御言葉を借りる迄も無く「ご縁」としか。
藍宇/劉に「主人公がのめり込むだけの、美貌かあるいは官能性が」無かったと感じられたのなら、それはそれだけの縁なんでしょうし。
このレビューを読んで、「『藍宇』って受がぶさいくなのね。じゃ観るのやめた」と思われたとしても、それはそれだけの縁なんでしょうし。
言葉を乗り越えてなお成り立つものがあればこそ、「おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざ」なんだろうなあ、と思います。矛盾しているようですけれどもね。
1月末に転倒→骨折→手術→リハビリという経過を経た母が、あさって退院の運びとなります。実家おさんどんはこのあとも定期的に続けていくつもりですが、取り急ぎ、この3ヵ月半の己の労をねぎらうべく旅に出よう、と思います。
先月あたりからなんだかむらむらしちゃって、徒然にガイドブックなんか読み漁っていました。ガイドブック読んで、あたまのなかでその街を歩いているだけでも随分と慰めになりましたけれど、やっぱり行って見るに越したことは無いですから。
母を迎える支度を終えて横浜に戻って飛行機とホテルの予約をしました。海外に行くのは2000年7月、ツインタワー在りし頃のニューヨーク以来。ほんとうはまずは北京に行きたかったんです。『藍宇』聖地巡礼したかった。でもまあしょうがない。これもまた、魔の五月の為せる業だもの。
雨季まっただなかの香港です。
五泊六日のひとり旅。
行って参ります。
●美しい名前。──『藍宇 Lan Yu』
●シガ フタリヲ ワカツマデ。──『藍宇』其の拾参(2011年5月13日)
●三年不蜚不鳴。──『藍宇』其の弐拾詩(2012年5月13日)
●情熱の嵐。──『藍宇』其の燦拾讃(2013年5月13日)
●生活と云う名の。──『藍宇』其の燦拾桎(2014年5月13日)
●藍くて咲こうとした恋は。──『藍宇』其の是拾溢(2015年5月13日)
●遥かに照らせ山の端の月。──『藍宇』其の是拾呉(2016年5月13日)