蛇果─hebiichigo─

是我有病。

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ブイエイチエス。──『藍宇』其の燦拾屍
日本国内で販売されている『藍宇』DVDっていまいったいどういう状況になっておるのか。

ということを思い出したようにチェックしていますが、某オークションの商品説明で「入手困難品」と書かれていたのを見たらなんだかおセンチになってしまいました。もう秋ね。秋でなくても密林さんで新品が(マーケットプレイスじゃ無く)販売されているのを絶えて久しく見かけません。もう在庫が底を尽きて、そして版元さんも再版するつもりは無いのだろうなあ。膨大な映画が生み出され消費されていくなかで、一篇の映画ソフトの市場的な寿命の儚さを思うとますますおセンチになってしまいます。

でも、記憶に残るあいだはおしまいじゃない。
留下来的记忆还没完呢。

入手困難でございますといわれてしまうとおセンチにはなるものの、即ちそれだけアツく支持され求められたから、なんでしょう。いっとき話題になってすぐに忘れられ、在庫だけは膨大にあるけれどだれにも顧みられない。映画に限らずそういうものは山のようにある。なんだかんだ言っても『藍宇』は、そうした残酷な消費をかいくぐってサヴァイヴしていくしぶとさを持った作品だと思います。私が死んでしまっても、監督も役者も、映画に関わったひとすべてが死んでしまっても、『藍宇』という一篇の宇宙だけは青青と残っていく。ちょっと痛快です。


そんなことをおもいつつ密林さんをチェックしていたら、『藍宇』の中古VHS版が「8800円」という価格で出されていたので魂消ました。
2011年2月、東日本大震災が起きるひと月前に私がこれを買ったときは667円だったのです。そのころはもうビデオという形式で映像鑑賞はしなくなっていたのですが、VHSという体裁の『藍宇』を見たことが無かったので珍しかったし、しかしそれ以上に食いついてしまったのがこれだ。ちっちゃくてすみませんが。




DVDのジャケではかつて見たことが無い、美しい絵です。これ1枚に金払ってもいい、とか思い詰めちゃって。でも実際に届いたものは日本版DVDと同じジャケでした。いまでは出品しているショップさんも「カスタムイメージとパッケージに違いがあります」という断り書きをなさっていますが、そのときはそんなこと書いてなかったと思うよ。そのあと震災があったから細かいことは忘れちゃったけど。ですからまんまと釣られたということかもしれません。でも『藍宇』に罪はありません。現物はこれです。





一度だけ、そっと再生をしてみました。
そのときの感慨はここに書いています。投稿した日付を見れば東日本大震災が起きる二十日ばかり前です。これまた記憶が定かじゃありませんが、震災前、最後に『藍宇』を鑑賞したのはこのときだったかもしれません。何処かのレンタル店の店頭でお客を取らされていた(笑)このVHS本体に貼られたバーコードシールには、「04/09/24」という日付が。いまから9年と3日前の夜、はじめてこの仔を買ったのは、何処のどなたさまだったのでしょう。なんだかおセンチになってしまいます。もう秋ね。秋はともかくこの『藍宇』VHSのためだけに、ブルーレイプレイヤーを導入したいまもビデオデッキを処分せずに持っております。この先も思い出したようにそっと再生して、おセンチなきもちになるんでしょう。あと、たとえばなにかエマージェンシーな事態が起きて、

「お客様のなかに、『藍宇』VHS版をお持ちの方はいらっしゃいませんかッ!?」

などという緊迫の展開になったとき、お役に立てることだってあるかもしれないじゃないですか。万が一にもねえよという気もしますが。いやいや人生なにが起きるかわかりません。『藍宇』が世界を、世界の何処かのだれかを救うことを、私はかなりおおまじめに信じています。

| 11:54 | 藍迷。 | comments(6) | - |
占い猿・月光価千金。
仕事がぱつで月餅を買いに走る余裕もございませんでした。
中秋節快楽。
今宵の満月は胡軍さんの星座、魚座においでです。めでたい。めでたいついでに月のこととか考えてみたい。


ちょっとまえに『あまちゃん』で、「太陽と月」というのがテーマになっていました。アキちゃんを太陽、ユイちゃんを月に見立てて、なにもかも違いすぎるがゆえに惹かれあうふたりのこれまでとこれからを描いていました。『あまちゃん』における太陽と月というその関係は、同様に春子さんと安部ちゃんにも、春子さんとひろ美さんにも、種市先輩とストーブさんにも、いえることかもしれないなと思いました。
そして星座にも。
生まれたときに太陽が位置していたところを「太陽星座」といいます。太陽星座は表の顔、社会的な立場、オフィシャルの自分をあらわすといわれます。もうひとつ、生まれたときに月が位置していた「月星座」によって、そのひと生来の本質、裏の顔、プライバシー、隠された感情などのありようがわかるのだとか。
ちなみに私の場合、生まれたとき太陽が乙女座にあり、月は天秤座にありました。女神アストライアと彼女が手に持つ正義の秤がセットになってる。表裏合わせると自分はどうやらそういうものらしい。表向きは正義感が強くて潔癖で批評精神旺盛、裏にまわればなにかとぐらぐらしがちな事なかれ平和主義者といったところでしょうか。月星座の性質を自覚してそれに素直に生きたほうが楽なのだ、なんてこともよくききます。楽かどうかはともかくも、占いを読むときはかならず双方の星座をチェックします。オン(乙女座)の運勢がいまいちでもオフ(天秤座)が良かったりすると「やたーラッキーじゃーん」なんつって、浮かれることができますしね。

話はとびますが管虎監督作『厨子戏子痞子』。
民国31年(1942年)、日本軍によって封鎖され、コレラが猖獗をきわめる北平(北京)城下の胡散臭い日本料理店を舞台に、「厨子(コックさん=劉燁)」「戏子(役者さん=張涵予)」「痞子(ごろつきさん=黄渤)」をはじめとする胡散臭いひとびとが繰り広げる「驚心動魄的狂歓喜劇」です。
厨子、戏子、痞子はそれぞれの職業(「ごろつきさん」が職業かどうかはさておきます)をあらわす呼び名で、彼らはそれを極端に戯画化した出で立ちで登場します。しかしそれは彼らの本当の顔ではありません。高等教育を受けた文武両道のエキスパート。蹂躙された同胞を救おうと知恵の限りを尽くして奔走する憂国の士。それが彼らの正体です。ところが映画の途中から「表」と「裏」がめまぐるしく入れ替わりはじめ(最終的には彼ら3人そのものが、まったく別の3人と完全に入れ替わってしまい)、「表」向きの偽装であった厨子、戏子、痞子がそれぞれの本質、隠された「裏」の顔だったりするのかも、みたいな解釈も可能になってまいります。台湾金馬奨影帝である主演3名様が「表」と「裏」を巧妙に演じ分け、捨て身でスラップスティックに挑んでいるという点も含めて、太陽と月、陽と陰、オンとオフ、みたいなものが観ているこちらに響いてくる。そんな構造ももつ作品です。


せっかく中秋でもございますし、厨子、戏子、痞子、それぞれの中の人の太陽星座と月星座を調べてみました。調べてみただけでとくにこれといって分析とかは致しません。だってなにしろ月が綺麗なので。今宵はぼんやり空を眺めていたいです。




生年月日:1978年3月23日
生誕地:吉林省長春市
太陽星座:牡羊座
月星座:乙女座




生年月日:1964年12月19日
生誕地:北京市
太陽星座:射手座
月星座:双子座




生年月日:1974年8月26日
生誕地:山東省青島市
太陽星座:乙女座
月星座:射手座



厨子ちゃんは以前にも書きましたように「娘娘腔」を装っているという設定です。演じる劉燁さんの月星座がよりにもよって乙女座。どういう宿命でしょうか。やっぱりねえという気もせんでも無いが。「劉燁オールタイムヒロイン説」、天晴れ月にまでも保証されちゃって嬉しいような悲しいような。
ちなみに胡軍さんが生まれたとき、月は蠍座にありました。
無粋なことであいすいませんが、乙女と蠍のあいだに私が割って入るというかたちです。だから天秤はぐらぐらと、どちらにも揺れるのでありましょう。



●自分の月星座がどこなのかは、生年月日、生まれた時刻、生まれた場所がわかれば調べることができます。たとえばこちらなど→

●生まれた時刻が不明な場合は、「こよみのページ」の「月と星座の暦」で月の位置を調べることもできます。上記3名様については世界時と中国時間の時差8時間を設定した上で、生日に月がどこにあったのかを確認しています。


| 21:19 | 瑣屑。 | comments(4) | - |
やまのにんきもの。
四里あまり野分に吹かれ参りたり。(夏目漱石)


記事にもしておりましたが16日はしたまちコメディ映画祭で黄渤さん主演の『ロスト・イン・タイランド』を観るつもりでした。でも台風18号がどういう事態になるのだか読めなかったし、上野まで吹かれ参りたい気分にもなれなかったので、外出は諦めました。無念のうちに轟轟と鳴る風を聞いていたらうつらうつらして、まんまと二度寝をしてしまって、目が覚めたら午後3時をまわっていました。『ロスト・イン・タイランド』を観るためにこの1週間ぱつぱつのハードワークに耐えてきたので(加えて土日で太極剣4時間、八卦掌2時間とかがっつりお稽古してしまったので)疲れも溜まっていたのだと思います。のろのろ起きてのろのろシャワー浴びてのろのろコーヒー淹れてネットを漫歩していたら、劉燁さんについて書かれた雑誌のコラムをみつけて、無念な思いがすこし晴れました。





2002年に発行された『POP ASIA』に載っていたものだそうです。記事部分書き起こしてみました。


【アジアまたたび映画旅】 松岡環

17 ♪山の人気者、それはリウ・イエ♪


〈東京国際映画祭〉も無事終わったが、皆さん、お目当ての映画&ゲストは見られただろうか? 中でも劉燁〈リウ・イエ〉ファンの皆様方、ナマのリウ・イエ君には会えたかな? 私は彼の隣に座ってしばらくお話しするという幸運に恵まれてしまい、あの長ーい脚も、銀杏のようなかわいくて形のいい頭も、バンビのような二重のウルウル瞳も、ごくごく至近距離から拝めたのであった。役得、役得。
 役得というのは、コンペ部門に選ばれた彼の主演作『恋人』の字幕を、私が担当したことによる。この映画には、北京語通訳として活躍する私の友人がいろいろ関わったのだが、彼女が訳した脚本を私が字幕に仕上げたのだ。
『恋人』では、山麓にある村を舞台に、リウ・イエ演じる耳の悪い青年と、董潔(トン・ジエ)演じる他所者で口のきけない娘、そして村の朗らかな娘とが、詩情豊かな恋物語を繰り広げる。またまた山育ちの純朴な青年を演じるリウ・イエ君、『山の郵便配達』はもちろんのこと、『女コーチ』でも『恋人』と同じような山頂の村出身のバスケット選手だったし、『小さな中国のお針子』では山間部に下放される青年と、まったく「山の人気者」的役柄が続いている。
 それもそのはず、彼の素顔は外見こそ超美形モデルだが、内面はナイーブでとーっても謙虚。間もなく次作『東京に来たばかり』が千葉県でクランクインというので、「日本語はどう?」と聞いてみると、「難しい。まだコンニチワ、アリガトウ、ぐらい。僕は英語も少ししかしゃべれないし」「あら、外国の映画祭とかによく行っているのでは?」「ううん、僕はまだデビューしてたったの2年なんだ(中央戯劇学院を卒業して、という意味らしい)。若輩者だから外国なんてなかなか」という具合。あーう、『藍宇』の主人公そのままだ! といたく感激した私である。
 こんな人柄だもの、監督が競って使いたくなるのもわかる。おまけに、実物は驚くほど長身なのに(170cmの私より頭一つ高い)、映画の中では画面にぴったりとはまり、それほどの長身とは感じさせない。すごい演技力だ。
『恋人』でもその演技巧者ぶりを堪能することができる。おまけに監督の蒋欽民(ジャン・チャンミン)は、ファン・サービスからか、やたらリウ・イエ君の上半身裸体を見せてくれる。芸術的センスと共に、なかなかファン心理のツボも心得ておられる監督である。
『恋人』を配給するドラゴン・フィルムでは、『藍宇』も目下交渉中だとか。『小さな中国のお針子』も間もなく公開だし、来年の日本はリウ・イエ旋風が吹き荒れるな、こりゃ。




去年のいま時分、『Movie Gong(ムービー・ゴン)』のバックナンバーお取り寄せして、10年前の劉燁バブルとでもいうべき至福の時代に思い馳せたりなんかしていたんでした。
上記の松岡環氏のコラムからも当時の空気はつたわってまいります。なんだかむやみとあまずっぺえよ。かえすがえすも2002年に劉燁さんを知っていたかったでがす。「一度ほれたら褒め殺す」がモットーのずぶんですが、いまさら劉燁さんのことを

「外見こそ超美形モデルだが」

とか、思っていたって書けやしませんこっぱずかしい……。こういうことを衒いも無く書けてしまう、それこそが時代の空気の為せる業なのだと思うのです。そういう時代に居たかったなあと、かえすがえすも思うのです。あと、

「銀杏のようなかわいくて形のいい頭」

ってえのにもしたたかに殺られました。ぎんなん。到底ずぶんごときに考えつける形容ではねえでがす。枝豆とか焼き栗とか南瓜の種とか、劉燁さん(てか藍宇)といえば豆っぽいもの木の実っぽいものに寄りがちですが、これもあっぱれ「山の人気者」の証左でしょうか。この秋は串焼き屋さんでぎんなんを頼んでしみじみ劉燁さんを偲ぶ、というステキな呑み方もできそうです。


「監督の蒋欽民(ジャン・チャンミン)は、ファン・サービスからか、やたらリウ・イエ君の上半身裸体を見せてくれる」




このお写真は裸体じゃありませんが、劇中ではなにかと見せてくれています。ありがとうございます。ファン・サービスもあると思いますし劉燁さんの脱ぎっぷりがよろしいというのもあると思いますが、ナイーヴであどけない「山育ちの純朴な青年」のなかにだって女の子とセックスしたいっていう欲望はきっちりあるよってあたりを片想いのせつなさのなかにしたたかに滲ませてみせる劉燁さん、やっぱりほんとにうまいです。


「(日本語は)難しい。まだコンニチワ、アリガトウ、ぐらい」

惜しくも『東京に来たばかり』は無しになっちゃったけど、この当時いっしょうけんめい日本語を勉強していたことが、10年経って『厨子戏子痞子』『火線三兄弟』のあのあどけない日本語台詞に結実したんですね。10年経っても『厨子戏子痞子』のプロモーションで「日语特别难」とかぼやいていましたが。10年経っても「いれっしぇいまっせぇ〜ん」とか「わぁたしぃの、おくさぁん」とか「たいちょぷ。にかす」とか「やみてやみて」とか「ちょろまれ!」とかですがうわーん。


(『POP ASIA』コラムのお写真はこちら様よりお借りしました。ありがとうございます)


| 00:54 | Liu Ye(劉/リウ・イエ) | comments(8) | - |
隠約可見。
地震だの豪雨だの竜巻だの『あまちゃん』の続きが気になるだので九月早々たいへんなことになっています。
『あまちゃん』はともかく自然災害の被害を受けた地域にお住まいの皆さまには、衷心より御見舞い申し上げます。
そんなこんなでなんだか疲れちゃって昨夜は早めに寝てしまい、丁晟監督が微博にこんなものを上げていたことなど知る由も無く朝までぐうぐうな私でした。




先导版预告片粗剪已完成,即将开始调色混录



だれでしょう、このメキシコの車泥棒みたいな顔のうすらヒゲ野郎は。
なんつって、申すまでも無く劉燁さんにきまっていましたね。『警察故事2013』の先行予告篇ができたそうです。嬉しい。嬉しいけどそれにしても。たまたまこういうカットだからだと思うが、なんか曰く言い難くプロポーションが変じゃございませんかこれ。頭から腕がはえてるみたいですよ。劉燁さん本人がこういうプロポーションのひとだと誤解されそうだが断じてちがいますから。そりゃ撮影したときがちょっとぽよん期だったことは否定せぬ。風立ちぬ。勢いで言ってみたけど「ぬ」しか共通点が無かった。それはともかくもしかしてわるいやつらがお誘い合わせで劉燁さんのお面をかぶってわるいことをしている、などという設定とか? 劉燁さんがボスを務めるわるいやつらチームではそれが不文律とか? そこまで百歩譲って深読みしてさしあげる必要がどこにあると思ったりもするのですが、百歩だろうが千歩だろうが譲歩したくなるのも迷心。予告篇が公開されるまで焦らされプレイ煩悩蟻地獄はつづきぬ。生きねば。
| 21:40 | Liu Ye(劉/リウ・イエ) | comments(2) | - |
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