べっ・ぴん【別品・別嬪】
●特別にすぐれた品。とりわけてすばらしい品。また、とりわけよくできた人。器量人。
●美しい女性。美女。美人。器量よし。
歌舞伎・与話情浮名横櫛(切られ与三)(1853)序幕
「昨夜は別品(ベッピン)のお世界、大分おもてなしされた御やうすでござりましたな」
(精選版 日本国語大辞典)
基本美しいひとがすきですが、美しいひとをあらわす表現はもっとすきかもしれません。たとえば綺麗首とか婀娜者とか傾国とか契情とか紅裙とか少艾とか解語の花とか。そのなかでも「別嬪」というのはなにかこうスペシャルなかんじがします。しかしそもそもこれは「うなぎ」を指した表現だったという。愛知県豊橋市の老舗うなぎ店「丸よ」さんのホームページに
その由来が書かれています。看板に「頗(すこぶる)別品」とのみ書いて出したのが評判を呼び、「他に類なき美味なるを以て別品と言ひしが、遂には美婦人の事まで「すこぶる別品」と呼ぶやうになり、名古屋辺にては単に別品と稱するに至れり」。それがいつしか、「今日にては別品と言へば鰻とは思はず、只美婦人の一名となるに至れり。」ということになったのだそうでございます。
のちに「品」の代わりに「ひめ。身分の高い人の妻で、正室に次ぐ女性。転じて、婦人の美称」をあらわす「嬪」の字をあて、「別嬪」と表記するようにもなったのだとか。
「別」には「わかつ、区別する、違い」という意味があるので、「別嬪」とは、そんじょそこらに掃いて捨てるほどいるレベルのかわいこちゃんとは厳然と一線を画すたいへんな上玉、なのです。そしてそもそもがうなぎに使われてたんですから、男性女性双方に使用したところでなんら差し支え無い。てな次第でこれです。
新浪微博フォロワー1千万人突破ありがとう企画なのかどうなのか。
一昨日の夜、劉燁さんが「コメント3000件超えたら昔写真集用に撮った女装写真載せちゃうよ」宣言をなさったところ、あっちゅうまに3000なんて軽く超えるアツいコメントが寄せられました(いま現在6万件超)。便器に座って十数時間熟考したあげく(本人談)、昨夜アップなすったのがこのお写真。
写真集『捉影刘烨26』を購入したのはいまから3年前、2010年の夏でした
その顛末。
この一葉を拝めただけでもくそ高い金払ってちうごくからお取り寄せした甲斐がありましたことよ、というぐらい、正統なる「別嬪」の肖像です。
なかみは芳紀26歳、身長185センチメートル超のでっかい男の子なんだねえ、と思って見れば格別の趣がございます。しかし写真集拝んでわかったんですが、ネットに落ちてる画像の質は、実際の本のそれにくらべると正直かなり劣ります。こんなもんじゃないんだよこの娘のものすごさはせっかくの別嬪なのに別嬪の別嬪たる所以がぜんぜん伝わっていないじゃないかばかやろう、と毎度くちおしくってたまらない。くちおしいあまり実物をスキャンして微調整をしてみました。ほんのちょっとだけ近づけたような気もしますがやっぱりまだまだです……。
この一葉は一葉だけで十二分に別嬪なのですが、これに対面する見開き右ページにこの子が並べられ、二幅対となることによって、凄味はいや増しています。
劉燁さんが微博で「乞丐(qigai=乞食)」と書いていたのはこのお写真のことだと思います。
撮影時の劉燁さんの年齢26歳にアルファベット26文字を掛けているため、ページの下部には英語の単語や成語がちっちゃい級数で列記されているのですが、美少女のページから「P」がはじまっていて冒頭に置かれた単語が「pet(爱畜爱物宠儿)」。物乞いの男の子の下には「play a part(扮个角色)」という表現も見えて、なんか意味深です。すでにだれかの手活けの花といった風情の豪奢な旗袍の美少女と、うすよごれた物乞いの青年。書かれていない物語をどうぞ読み取ってくださいな、といわんばかり。
しかしそれよりなによりこの飛距離をやすやすと体現してしまっている劉燁さんがすごい。
映画デビュー作『山の郵便配達』の霍建起監督に声をかけられたとき、彼は「ぼく、なんでも演じることができます」と答えたと、どこかで読みました。なまじなことじゃいえない台詞だなあ、と思いました。そういえるだけのものをこの若さですでに持っている、そして持っていることに対してなんの衒いも無く自覚的なんだなあこのひとは、と。
中央戯劇学院で共に学び、音楽劇『琥珀』、電視劇『火线三兄弟』で共演された日本人女優・松峰莉璃さんは、
ご自身のブログで劉燁さんについて、
「星の数ほどいる俳優の中からトップに立つのは普通の精神力とか演技力とかでは無理だろう」
「自分の努力とか、縁とか、運とか、後は演技力とか人並み以上の物が全部必要なのです」
と書かれています。
劉燁さんそのひとをまったく存じ上げぬ自分が言うのも口幅ったいが、彼の仕事をみていれば、そういうことはすべてわかります。
『藍宇』ではじめて彼を見た、まだ名前も知らなかったそのときにもう、そういうことが、瞬時に、なにもかもぜんぶわかってしまったからいま私はここにいるんだと思います。
正真正銘。掛け値無し。頗つきの別嬪。
滅多なことでは出逢えない上玉。
ちょっとなんかこのー、「乃公出でずんば」つうかんじですか?
いやべつに俺様の話じゃないんで俺様がいまここでドヤ顔になってたってしょうがないんだけども。