昨日1月6日は、
『暗物質/Dark Matter』(邦題:アフター・ザ・レイン)DVD、レンタル解禁初日でした。みなさまもうご鑑賞になりましたでしょうか。
自分はといえば、正月跨ぎのくそめんどくさい最重要案件仕事を青息吐息で納品し、納品したその足で神楽坂から渋谷TSUTAYAに駆け込んで新作の棚からむんずと拉致。
「ああやっと、イエたんと一日だけのお正月。むふふふふ。むふふふふ」
と、そうとうきもちわるい感じのひとになって帰宅して鑑賞をはじめたのですが──途中からどんどんどんどんバッドな方向へバッドなシンクロをしていってしまひ、観終わるころにはテンションどよんどよん。
なんだかもう、なみだも出なかった。
映画としてはあちこち未熟でどうたらこうたら言いだせばきりが無い。
でも、映画としてどうたらこうたら言う以前に、劉燁演ずる主人公の破滅のしかたが自分にはどうやら、たいそう身にこたえるものらしかった。
「アメリカに憧れる中国の男の子」というものに、行けずに逝った藍宇とか、更には僭越乍ら、実際に行って仕事してる演者自身まで二重映しになっちゃって、挙げ句どえらく落ちてしまったようなのです。劉燁さんはかわいいんですけどね。かわいいんですけど、ええ、とっても。あざといくらいに(笑)。そのあたりの感想はいずれ書きます。
と、いう次第で。
今朝がたいただいたお年玉効果で「暗物質でどよんどよん」からはだいぶ立ち直れたんですが、どよんどよんついでに
昨年末のランキングからは“敢えて”はずした、「映画のラストまで生き残れません」なひとたちについて走り書きなど。
新年早々かなしくて御免なさい……。
Yuan Xian from CURSE OF THE GOLDEN FLOWER
感想文の題名通りになにかといろいろと可哀相で。なおかつ力も人望も伴わないお飾りのお世継ぎという手も足も出ない感じが相俟った祥さんは、たいそう綺麗な景色でありました。同様に「飼い殺しの籠の鳥」であっても鬼狼は自ら死を選ぶ自由を自らの意思で手にしたけれど、祥は無力で不幸で綺麗なままなにもできず、極彩の宮殿の奥でひっそりと息絶える。口吻が退化しているので食餌行動が叶わず、交尾ばかりして挙げ句死んでいく大水青という蛾のようだ。手にのせて愛でているうち握り潰してしまいたい嗜虐の衝動にかられ、いやいやこんな繊弱で綺麗なものになにを無体な、と危うく踏みとどまったりもする。私が祥の父王だったなら、てのひらのなかに閉じ込めて金輪際逃がさない。そんな父を置き去りに泉下へ去る蒼白な死に顔。絶品でした。
Xiang Dong from MOB SISTER
情愛とは無縁に育ったらしい無口な男の子がやくざの鉄砲玉として拾われて、鉄砲玉らしくあっさりと無惨な最期を遂げる。拾ってくれた親分や兄貴たちには絶対服従で、絶対服従であることに「自分」というものを見出し、そしてまた人付き合いの苦手な子なのでそれが楽でもあるらしく。だから気持ちも言葉もほとんど表にあらわさないまま、ひとりでつましく充足している。長身の背をかがめ無器用そうに箸をつかって、片想いしてる親分のお嬢のために魚の骨をとってやる。気難しい仔犬みたいな仏頂面が、お嬢とふたりきりのときだけは笑顔に解ける。向東のそうしたいちいちが、いちいち先行きの悲劇を匂わせてかなしい。体を張ってお嬢をまもり、自分は膾に斬られ血に塗れて死ぬ。ステロタイプな成り行きといえばいえましょうが、そうしたステロタイプを一度はこのひとでみてみたい、というのも惚れた弱味でございますゆえ。
Szeto from PURPLE BUTTERFLY
司徒は、「劉燁さんが演じた踏んだり蹴ったりなひとランキング」でいえば1位鬼狼の次ぐらいに踏んだり蹴ったりなひとだと思います。恋人を虫のように殺され、醒めない悪夢の釣瓶打ちのなかで魔都を彷徨い、わるいひとたちに嬲られ翻弄されずたずたにされて声も無く泣く。戦争さえなけりゃきっと平凡な堅い勤め人で、いずれかわいい恋人と所帯を持って、ささやかに年老いていく人生だったろうに。愛とか夢とか、未来とか希望とか、なにもかも戦争という悪意によって目もあてられぬほど台無しにされ、最後に手のなかに残されたのが拳銃ならばもう、引き金を引くしか術は無い。鬼狼や荊軻と同じく、普通の男の子が苛酷な運命に蹂躙され絶望のなかで心ならずも人殺しに──というヴァルネラビリティーの系譜に連なる司徒は、自分的にはそうとうな萌えキャラなのでございました。