蛇果─hebiichigo─

是我有病。

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Della Robbia Blue。──『藍宇』其の是拾戯
恋というものを知ったの。
それも突然、これでもかってぐらい、たっぷりと。
まるで、それまで影になっていたところにいきなりパッと、
目のくらむような、光をあてたように──

そんなふうに世界がわたしの目の前に現れたの。




冬至です。
世間的には風呂に柚子を浮かべたり、かぼちゃを煮て食べたりする日です。
どちらも江戸時代に始まった風習だそうで、なぜ冬至に柚子でありかぼちゃなのかという理由も諸説あるようです。かぼちゃは夏の野菜で陽の気をもつから、それを陰の季節である冬に食べることで陽の気を補う、というのがそのひとつ。柚子もかぼちゃもその色が(そのかたちも)、陰のきわまるこの日を境に復活へと転じる(=一陽来復)太陽を思わせるからかな、なんて思ったりもします。

冬至が近づくにつれて──というか冬至が近づかなくっても。オールタイム病んでいますので──なにかと『藍宇』のことを考えていました。
すこしまえにAmazonプライム・ビデオに入った『キャロル』をまた観て、自分の書いた記事を読み返してみたりね。
おとといはBunkamuraシアターコクーンで大竹しのぶと北村一輝の『欲望という名の電車』を観ました。
ここでも何度か書いていますが「2」という数秘をもつ私が素通りできない、取り憑かれる、病んでしまう、そういう「ふたりの物語」がいくつかあります。『欲望という名の電車』もまたそう。20代のはじめごろ、エリア・カザン監督によるヴィヴィアン・リーとマーロン・ブランド主演の映画を観て、そのあとテネシー・ウィリアムズの戯曲を読んで、ブランチがかわいそうでずっと泣いていました。
はじめて舞台を観たのは10年前。2007年11月の東京グローブ座。ブランチが篠井英介、スタンリーが北村有起哉でした。
そして此度が二度目です。

数秘「2」の自分が素通りできない、取り憑かれる、病んでしまう、その集大成でもあるような『藍宇』。それを知ってのちにはじめて観る『欲望という名の電車』。
なににせよ『藍宇』前/『藍宇』後では世界はまるでちがう現れ方をするものだしブランチの科白を借りるならそれこそが「恋」だ。


16歳のときに恋におちて結婚した美しい少年は、じつは同性愛者であった。
いやらしい、と詰られて少年はピストル自殺を遂げる。
彼の死によって負わされた絶望と慚愧。
目をそむけ耳を塞ぐようにして、つぎつぎに男に身をまかせた。
そういう過去をもつ、落魄した名家の令嬢ブランチ・デュボア。

もしも陳捍東が、藍宇と出逢うことの無いままに生きていたとするならば。
いえ。
出逢ってのちに無慙な事故で藍宇を喪った陳捍東は。
あるいはまた「藍宇」という光にはじめて照らされた陳捍東は。
ブランチ・デュボアのようだったかも知れない。
なんて思ったりした。


「欲望」という電車に乗って「墓場」という電車に乗り換えて、六つ目の角で降りてしゃなしゃなと「天国」にやってくるブランチ・デュボアは、ドレスもネックレスもイヤリングも手袋も帽子も、なにからなにまで白ずくめ。
西欧において白は、純潔や貞節、光明や真理、そして処女そのものを表す色です。
てあたりしだいに男と寝ていた女がそうした色を纏う意味と理由については、こちらの論文が解き明かしてくださっています。

白からデラ・ロッビアの青へ― ブランチ・デュブワの心の動き
https://seijo.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=3804&file_id=22&file_no=1

古代中国において、白は不吉な色であり、喪の色でもありました。
白を纏うものに出逢えば一族もろともに死ぬであろう、といわれていました。
五月の初めの逢魔時、ブルー・ピアノが聞こえるニューオーリンズの「天国(Elysian Fields)」にふらりと現れるのは、そういうものでもあるのです。

たとえば天安門事件の夜、『北京故事』においても『藍宇』においてもかれが白いシャツを(だれかの返り血が点々と付着した白いシャツを)着せられているのも、もしかしたら、そんな理由があってのことなのかも知れないです。


妹の夫にレイプされて発狂したブランチが「天国」を去る日。
彼女が纏う色は青。

ユーニス きれいだねえ、その水色のスーツ。
ステラ  水色じゃなくてライラック色。
ブランチ 二人とも違うわ。これは「デラ・ロビア・ブルー」って色なの。古い肖像画でマリア様が着ている服の色。

青は聖なる色であり、生命の力を表す色であり、同時に、早世したひとの棺を覆う布の色でもあるといいます。


15世紀イタリアの彫刻家で、釉を使ったテラコッタ技法を開発したルカ・デッラ・ロッビア(Luca della Robbia)というひとがいます。かれの甥のアンドレア・デッラ・ロッビア(Andrea della Robbia)が、その技法を用いて作品を作った芸術家のなかで、最も有名な人物なのだそうです。
アンドレアの作品に使われている青こそが、ブランチのいう「デラ・ロビア・ブルー」(デラ・ロビアの青)なのでしょう。
「Della Robbia Blue」で画像検索してみますと、かれの作例をみることができます。








そうそう、シアターコクーンの舞台においてブランチが最後に纏っていたのも、正しくこの青でした。
四つめの画像の作品は“Prudence”という題名で、これは聖母では無く、「分別」「慎重」(=prudence)を擬人化したものであるようです。
老人と若い女の双つ面。
右手に手鏡。左手には蛇。
鏡と蛇はそれぞれにいろいろなものの寓意でもあります。
「鏡」を多用する映画に病み、「蛇」を冠したブログを営む私が、一年でいちばん長い夜にこういうものに巡り会うというのも、ふしぎだけどほんとうのことでした。


●茫茫人海。──『藍宇』其の拾九
●待宵。──『藍宇』其の燦拾壱
●ひらく夢などあるじゃなし。──『藍宇』其の燦拾互
●聖馬利亜。──『藍宇』其の燦拾穹
●夢の曲。──『藍宇』其の是拾澯
●月待者。──『藍宇』其の是拾鹿



戯曲の引用はすべて『新訳 欲望という名の電車』(テネシー・ウィリアムズ著/小田島恒志訳 慧文社)による。
| 23:23 | 藍迷。 | comments(2) | - |
Comment








新年快楽〜!!
カエルでございますー!
昨年も大変お世話になりました!
今年もどおぞよろしくお願いいたしまする〜(^^)

ふえええええ〜(滝汗)
冬至の記事に元日コメするというていたらくで申し訳ござりませぬーm(_ _;)m

ぢつはわたくし『欲望という名の電車』て映画もむろん舞台も観たことはないのですが(汗)以前よそさまのブログで(この映画に出演したとき?なのかどうかはわかりませんが)若き日のマーロン・ブランドのお写真を拝見しまして。
前にちろっと言ったかもですが、それがなんだか若造時代の胡軍さん(笑)ぽい雰囲気だったのです〜そうあの大胸筋番長(笑)だったあたりとかの感じ♪

ま、それはともかく(笑)
「デラ・ロビア・ブルー」綺麗な色ですね。
深い青も好きですがこの青もいいな。
この青単独でも綺麗ですけど、白い像を引き立てる青というか白との組み合わせがとても綺麗だと感じます。

…でもすいません(汗)
あの。天使の顔に羽がついてるアレ…
『王的盛宴』のこわい海報思い出しちゃったですう〜う〜(T_T)
posted by カエル | 2018/01/02 12:15 AM |
>カエルさん

新年快楽!
素敵なお年賀ありがとうございます。
今年もよろしくお願い申し上げます。

昨年は1月22日に『山の郵便配達』をご一緒したあとに母が骨折・入院となり、5月半ばに退院して2週間あまりで再び骨折・入院となり、私自身も夏にすっ転んで頬骨を骨折したり(笑)、ほんとうにばたばたと過ごしてしまった年でした。
でもそのわりには映画や芝居やライヴもそこそこ行ったし酒も呑んだし、そのうちのいくつかにお付き合いいただいて、楽しかったです。1週間から10日に一度くらいのおさんどん帰省は今年も続きますが、来週末の『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』を皮切りに中華圏の映画の公開ラッシュも始まりますし(楽しみなのは『マンハント』&『空海』!)、暇をみてお付き合いいただけますと嬉しいです。

本文にも書きましたが『欲望という名の電車』は『藍宇』に病んでしまうその素地を形成した物語として20代の頃からあったもので、8年前の『東宮西宮』の感想文http://she-guo.jugem.jp/?eid=26でもすでに、

「『東宮西宮』は映画というよりも舞台劇的で、小史と阿蘭はどこかしら『欲望という名の電車』のスタンレー・コワルスキーとブランチ・デュボアみたい──って書いてみて、胡軍が演るスタンレー・コワルスキーってどんなにかおそろしくどんなにか素敵だろうか、とちょっと茫然自失の体です。」

なんてことを書いています。

たぶん、惚れた役者にはみなスタンリーとブランチを演じさせたいという欲望が抜き難くあるんだろうと思います(笑)。
世界は善悪二元論では片づけられない、とよく言われますが、自分が病んでしまう二元というのは一神教的なそれでは無く「陰陽」、対立し調和し置換されうるふたつ、あるいはふたりというもの。
ブランチとスタンリーも、捍東と藍宇も、みんなそうなんだな。
なんてことを舞台を観て考えていたりしました。
posted by レッド | 2018/01/05 11:45 AM |
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