蛇果─hebiichigo─

是我有病。

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水剋火。
BSプレミアム『古代中国 よみがえる伝説』「項羽と劉邦 〜王者の条件〜」を観ました。
「古代中国の歴史の現場を“旅人”が訪ね、英雄たちの姿に迫」るというプログラムです。詳細はこちらをご参照ください。


「旅人」は吉川晃司さん。
吉川晃司さんといえば、80年代が青春だった自分の場合はやはりこれ。






“モニカ”以外の吉川晃司さんといえばです。
もとイエロー・モンキーの菊地“エマ”英昭をレコーディングやツアーのサポートギタリストに起用しまくり、「エマちゃん(はぁと)」とお呼びになるほどエマちゃんだいすきエマちゃんぞっこんらぶーな男である。
ざっとそんなくらいの認識しか無かったが吉川晃司さんはじつは中国史マニアとしても筋金入りで、『別冊文藝春秋』2005年1月号で宮城谷昌光先生と対談したこともあるんだそうです。すいませんお見逸れしました。

項羽の生まれ故郷、江蘇省宿遷にて、項羽像(男前)の前に佇む吉川さん。



20140422_kodai1.jpg


“モニカ”とエマちゃん以外の吉川晃司さんといえばです。
2009年のNHK大河ドラマ『天地人』で織田信長を、昨年の『八重の桜』では西郷隆盛を演じておられました。
どちらもそれは素晴らしかったのです。静謐な殺気を漲らせ、分の厚い刀をすらりと抜きざま真っ向から脳天に振り下ろすような、そんな芝居をなさっていました。信長と西郷という、非業の死を遂げた一個の英雄をそのように演じる吉川さんをみていてふと、このひとに項羽を演らせたら似合うだろうなあ、なんて思いました。
そんなこともあったせいか、まったく根拠は無いけれど吉川さんは項羽がきっとすきだろうすきにちがいない、と思いながら番組を観ていたら、やっぱりだいすきでらっしゃるみたいでした。吉川さんが項羽について語った言葉を抜粋してみます。


項羽は、指揮官としても、ひとりの戦士としても、きわめて高い能力をもっていたと思います。
その強さに牽引されて、兵士たちも力を発揮したんだと思います。
項羽の魅力とは、ひとりで運命を切り拓いてゆくかのような、つよさだと思います。

歴史に「もし」はナンセンスなんだけども、項羽がもうちょっと人生経験を重ねていたら、戦に一度でも負けることができていたら、違った結果が生まれたのかなあと、俺このひと好きなんで、どうしてもね、思っちゃうんです。


覇王項羽は火の如し。
人間は火は怖いものだと知っているから近づかないでしょ。ある一定の距離から、それを縮めることをしない。大火傷することを知ってるからですね。
まさに烈火の如く。
だから孤独になりやすかったんでしょうね、項羽さんというのはね。
項羽というひとは、本人の器量、器いっぱいに、そこをすべて、闘いで埋め尽くしてしまって、その器量から溢れたときに、その運命が果てたのかな。


自身のことを顧みつつ、項羽を語っているのかも知れないな──なんておもいました。
項羽への甘苦い哀惜と共感が、彼の言葉のはしばしから滲んでくるように感じられたのです。
以前、中国のメディアがやっていた『王的盛宴』メインキャラクターの皆さんをそれぞれ黄道十二宮にあてはめてみるという遊びにおいて、項羽は獅子座ということにされていました。吉川晃司さんも8月18日生まれ、獅子座です。項羽の正確な生年月日は伝えられていないから所詮は「遊び」だし、暗合というほどのことも無いですが、獅子座のエレメントが「火」であることをおもえば「烈火の如く」とする吉川さんの項羽評は的を射ています。
そして、その「火」を滅ぼすのが「水」。


高祖劉邦は水の如し。
どんな形の器にも、己の形をそこに合わせて、フィットさせることができる。
そして、水は脆弱にみえるのに、ものすごいエネルギーをじつはそこに秘めている。
決壊すれば、地上でその破壊力に勝てるものはない。
だけど、なにか狡い匂いも、劉邦さんの場合はするわけです。
水はとどまれば汚れていく。
澱んでいく。
そして腐っていく。
最後には枯れはてる。


なんかどうも吉川さんは、劉邦のことがそんなにおすきじゃないようだわ(笑)。

秦への怨嗟で凝り固まった項羽には、「滅秦」という目的しか無かった。
だから、その目的を果たしたあとにどうするか、というヴィジョンをもてなかった。
劉邦はそうではなかった。水が伏流するように、彼は「自分の才能や器量を隠すことができる人間」であり、項羽の数倍老獪であり、負けつづけることで古い革のようにしたたかになった。そしてなにより、国というものがちっぽけな人間ひとりひとりから成っているというたいせつなことを、とてもよくわかっていた。項羽は二十余万人の秦兵を無造作に生き埋めにし、劉邦は敵であろうが「生かす/活かす」ということをかんがえた。
だから最後の最後で項羽は負けて、劉邦は勝った。
劉邦の老獪に敗れた項羽の稚気。いたいけで孤独なエネルギーがみずからを燃やしつづけ、すべてのものを傷つけ薙ぎ倒し暴走した挙げ句に燃え尽きる、そのさびしさ。
吉川さんはそのさびしさをこそ、傷ましい思いを以てみつめているような気がしました。


勝った負けたはともかくやっぱり孤高の英雄・項羽はかっこいい。ひきかえ劉邦。番組では劉邦の事績をそれなりに評価し称えてはいるんですけれど、たとえば司馬遼太郎が『項羽と劉邦』で描いたみたいな、あの滴るようなかわいらしさ、だめ人間であるがゆえの麻薬的チャームなどなどはほぼ伝わってこなくて。ていうか番組制作者にとってはそういうとこどうでもよかったみたいで。
ちょっと残念でした。
しかし劉邦の故郷・江蘇省金劉村がむやみとわんこだらけだった件はひじょうに笑えました。
村のみなさんが集まる会合がなしくずしに酒盛りになっちゃって、茶碗酒呷りながらぐんぐんメートルをあげてゆくおやじたちと、その足もとをうろうろするわんこたち。
あっぱれ劉邦さんのホームタウンというかんじです。
これ微博で拾った仔なんですが、自分的には劉邦さんをわんこ化するとこんなかんじです、つうことで番組とはぜんぜん関係ございませんけど最後に載せさせて。



| 11:20 | 王的盛宴。/項羽と劉邦 鴻門の会。 | comments(12) | - |
Comment








この番組、レッドさんのお知らせで気がついて、私も観ました。
歴史オンチの私には、とってもお勉強になりました。
観てよかったです。お知らせ、ありがとうございました。

ところで、吉川さんといえば私も「モニカ」なんだけど、
なぜか思い込みで「チャラい人」というイメージ持ってましたので、
大河の西郷さん役とか観て「へー」と意外に思ってたところでした。

元水球のすごい選手で、ギターも弾けて、歴史にも詳しくてカッコいいじゃないですか!
posted by meiry | 2014/05/02 2:17 PM |
吉川晃司さんってうちの息子1と同じ誕生日!

さらに三國志マニアで、あ〜ちゃんと3月にもあったんだ…見逃したぁ(;^_^A

そうね〜やんちゃぶりが項羽派なんだろうね!!
わんこならドーベルマンぽっいし(爆)
posted by ソン | 2014/05/03 8:55 AM |
>meiryさん

お役に立てて幸いです。私もこれ、カエルさんに教えていただいて慌てて録画しました(笑)。
テーマ絞ってまとめてくださってるので、わかりやすかったですね。
こういうの観ちゃうとやっぱり中国に行って現地を歩いてみたくなるなあ。

吉川さん、バブル期に鳴り物入りでデビューしたということもあるし、ビジュアル(スーツとか髪形とか)のイメージも手伝って「チャラい」と見られてしまいがちだったかも。
私もちょっとそういう印象ありましたが、じつはかなり硬派な方ですよね。
信長は想定内としても西郷にこのひとを持ってくるというキャスティングの妙はすごいと思いました。私はそれまで西郷ってあんまりすきじゃなかったですけど、吉川さんの芝居には打たれました。
身体能力ばつぐんで中国史ヲタでギターも弾けて背も高い。うーむ、いつかぜひ胡軍さんと共演してほしい逸材ですなあ(笑)。
posted by レッド | 2014/05/03 9:51 AM |
>ソンさん

おおお! 座右の誕生日占いの本によれば8月18日生まれは、
「頭の回転が速くて、知識欲旺盛な冒険家」
だそうです。「人から命令されるのを好まないので、自営業がおすすめ」だとか。
当たってます?

項羽はたしかにドーベルマンっぽい!
でかくて獰猛だけど鈍重じゃないかんじですよね。
そして劉邦はしばわんこ。
鴻門の会では尻尾が股のあいだに挟まりっぱなしです(笑)。
posted by レッド | 2014/05/03 9:52 AM |
某所では、失礼しました〜(笑)
レッドさんは常連さんだったんですね?
皆さんにアタシの知らない世界wを教えてもらって、感心することばかりです(笑)

吉川さんは、ジュニアも好きみたいです、
若いコにも人気あるんじゃないかな〜?
ちょこもなかじゃ〜んぼ♪のCMとか、喜んでみてます(笑)←食べたくなるぅw
posted by パブロ・あいまーる | 2014/05/03 2:53 PM |
こんにちは、おじゃま致します!
この、わんこ画像にヤラれて震える手でコメントを…
このわんこちゃんの瞳は!瞳は〜っ!一目見た瞬間、「レッドさま、おめめをコラしてる…?」って思って二度見からのガン見です(笑)まさに…イエわん。イエわんグランプリです。ありがとうございました…。
posted by まれお | 2014/05/03 6:07 PM |
>パブロ・あいまーるさん

いえいえ常連てわけでは全然無いのです。
『王的盛宴』の中国公開前に項羽と劉邦についてネットで調べていて、あちらのブログさんに辿り着き、コメントさせていただいた次第です。
なにかと評判が芳しくない(笑)『王的盛宴』を高く評価してくださる数少ないブロガーさんなので、いつも嬉し泣きしつつ読ませていただいております。

吉川さんは、若い頃より今のほうがずっと良くなったような。
男の子からみればやっぱり一個のロールモデルとして、憧れられるタイプなんでしょうね。自分との繋がりはエマちゃんぐらいしか無いと思ってたけど思わぬところで中国史つながりだった(笑)。
今日も仕事で図書館にお籠もりなんで、別冊文藝春秋借りてみます!
posted by レッド | 2014/05/04 10:03 AM |
>まれおさん

コメントありがとうございます!
このわんこ……微博でみた瞬間にひっくりかえりました(笑)。
リウイエさんというか『王的盛宴』の劉邦限定似て蝶!!
目尻になみだがたまっていそうなつぶらなおめめもですが、毛並みのかんじでまゆげだだ下がりっぽくみえるところまでもうりふたつ!!
鴻門の会でこいつが「キュウ〜ン……」とか鼻鳴らしてしっぽをぴるぴるさせてたら、そら項王もすべて水に流しますわ(笑)。
posted by レッド | 2014/05/04 10:04 AM |
ひこの親友テレンスを見る為に見た三池監督の映画「漂流街」で
吉川さんはダーティーヒーローの凄み満載で異彩を放っていました

最近は随分丸く(体型も)なられたなぁと大河なんか見ると思ってました

こんなに項羽を語ってるとは知りませなんだ〜
再放送とかあったら絶対に見なくては〜と思った次第です

でもね・・・今の私のハートは「魔警」のひこなんですww(笑)
 
posted by usako | 2014/05/04 10:34 PM |
すびばせん。出遅れました…(滝汗)。
>あの滴るようなかわいらしさ、だめ人間であるがゆえの麻薬的チャームなどなどはほぼ伝わってこなくて。ていうか番組制作者にとってはそういうとこどうでもよかったみたいで。
ちょっと残念でした。

…私も同じこと思いました(涙)。まーしょうがないかなあ〜。
それにしても、劉邦像があまりにもりっぱなんで腰抜かしました(笑)。
そうとうでかいですよねあれは(汗)。

って…うがあっ!!
さいごの黒わんこに心射抜かれましたあっ(笑)!
これわたしかに『王的盛宴』劉邦わんこ!!(笑)
ハの字まゆげなうえにふぐふぐな口元がまたっそれっぽーい(笑)。
…あれ?まさか『王的』に予想外の場面ででてきたわんこズの黒い仔ぢゃないですよね…??(笑)
posted by カエル | 2014/05/04 11:06 PM |
>usakoさん

ああ、『漂流街』!
三池監督作なので興味あったんですが、『不夜城』がちょっと苦手だった私は、馳星周原作ってことで避けて通ってしまった記憶が(笑)。
テレンスと、それからミシェル・リーが出てたんですね。いまキャスト見るとそそられます。ウィキ読んでたら、
「存在感が凄すぎて気軽な役には使えない。特別な役にもってこいな人。吉川さんはスペシャルな血が流れてますね」
という三池監督の吉川さん評がありました。「スペシャル」っての、よくわかる気がします(笑)。
記事でも触れた別冊文藝春秋の宮城谷昌光先生との対談、図書館でコピー取ってきて読みましたが、吉川さんものすごく勉強してらして、それでいて知識をひけらかすような物言いは一切なさらないところがひじょうに好感もてます。自分ももっと本読まなくちゃ、と反省しました。

『魔警』。
ひこさんのあのげっそり窶れた役作りがすげえ!と思いました。
日本公開楽しみですね!
posted by レッド | 2014/05/05 11:12 AM |
>カエルさん

番組上、劉邦と項羽の年齢差が20歳くらいで、劉邦の老獪に対して若い項羽の愚かさ、みたいな流れにしているのでしょうがないんですけどね。
劉邦のかわいいごろつきさん時代にはそもそも言及してないしねえ……。
佐竹靖彦氏の『劉邦』みたいに、ふたりの年齢差が5歳ぐらいであった、という視点から描いてくだされば、もっとちがう「項羽と劉邦」になったろうと思います。

……と考えてみればやはり『王的盛宴』の項羽と劉邦の描き方ってすごく新鮮だったんだなあ(笑)。

そして、いわれてみれば捍東役(はははは)のあの黒わんこにもちょっと似とる!
あの仔は胸とか足先とかが茶色でしたけど。
『王的盛宴』記事で劉邦のスチルとか見返しながら、あまりにも似過ぎなふぐふぐ具合をたしかめて、朝からニヤニヤしてしまいます(笑)。
posted by レッド | 2014/05/05 11:12 AM |
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