蛇果─hebiichigo─

是我有病。

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鵲の渡せる橋。──『不再讓你孤單(A Beautiful Life)』


香港地区で事業を行っている女性、佩如(舒淇)は大陸を訪れた際、ひょんなことから警察官の鎮東(劉燁)と恋に落ちる。数年後、事業の失敗を機に大陸で鎮東と共に生活することを決断したが、ようやく見つけた鎮東は病床に伏せていた。鎮東の面倒を見ながら新しい生活を始めた佩如だったが、彼は徐々に記憶を失っていく…。




『不再讓你孤單』を観ました。
DVDが届いたその夜に一度観て、七夕の夜に2回目を観ました。
とてもよい映画でした。
とてもよい映画でしたが、なんと申しましょうか、あまりにも『藍宇』でした。
そんなふうに観てしまってほんとにすみません、という気もしています。


劉燁演ずる主人公の名前「方鎮東」と「陳捍東」の韻が響き合うとか。
方鎮東が李佩如(舒淇)にマフラーを巻いてあげる場面が『藍宇』の冬至の夜を彷彿させるとか。
そういうことは断片的に耳にしてはいました。でも実際はそんなもん、くすぐりみたいなもので。そうじゃなくてお話の構造そのものが。

愛と金銭の相剋。
奉仕と欲望の鬩ぎ合い。
破滅。
別離。
再会。
「記憶」というキーワード。
死の予感。

なんだかあまりにも『藍宇』なのでした。


留下來的記憶還没完。
記憶に残るあいだはおしまいじゃない。

そういって藍宇は、消えない記憶を恋人のなかに刻みつけたまま夭逝する。
方鎮東は脳血管性認知症によってすこしずつ記憶を失いながら、緩慢に死へと歩んで行く。


劉偉強(アンドリュー・ラウ)監督はこの作品の構想を、10年のあいだ、あたためてきたそうです。
であればそこに『藍宇』というものの影はあったのだろうかということが、『藍宇』に病み窶れた身には当然乍ら気になります。
至上のロマンティック『藍宇』。そのロマンティックの精髄である藍宇を演じた役者を主人公に、同様にロマンティックな物語を撮ってみる。男と男では悲恋という体に終わった物語を男と女に置き換えて、婚姻、妊娠、出産、育児、さらには闘病という、「生活」に踏み込んでいく。
そういうふうに読みたがることそれ自体が、私の病ということなんですが。
關錦鵬と劉偉強は、たぶんどっちもすげえロマンティストなんだろうなあと思います。で、情熱的なニヒリストが撮る「現実」よりも、冷徹なロマンティストが撮る「普遍」のほうが、同じくロマンティストであり同時に身も蓋も無いリアリストである私は、やっぱりすきってことなんですね。早い話が。
そもそも劉偉強の「無間道」シリーズの感想文のなかで、


「藍宇が死んでのちの『藍宇』」という物語を書けと言われたら、それは『終極無間』のようなかたちをとって私のなかからあらわれるような気がする。


なんてなことを書いていたのでした。
「無間道」の感想文を書きながら、『不再讓你孤單』という作品も、そのときすでに観てしまっていたような気がします。わあ話が宇宙へ行ってしまった。ごめんなさい。「普遍」てそういうものなんですよ。きっと。ええ。(無理やり


方鎮東と李佩如のあいだに紆余曲折いろんなことがあって、いちおうはハッピーエンドという体裁でこのお話は終わります。
一方で、あれはほんとにほんとのハッピーエンドだったんだろうか、ということがずっと気にかかっています。
窃盗犯から暴行を受けて昏睡状態に陥った方鎮東を、寝もやらず、自らも衰弱しきった身で看護する李佩如。
方鎮東のバイタルサインがフラットラインを描いた瞬間、意識を失って頽れる李佩如。
李佩如が目覚めてみれば方鎮東は回復していて、ふたりは固く抱き合う。エンドロールでは仲睦まじい家族の様子が描かれる。だから額面どおりのハッピーエンドなんだろう、とは思うのですが。
これ、方鎮東も李佩如もじつはもう死んでしまっている、という読み方だってできるのです。
自殺では無いけれども一種、心中のような体で。

相愛のふたりが死によって分かたれること。片方が憂き世に置き去りにされること。数多起きるそういう現実に打ちひしがれた物語の意志が、相愛のふたりを同月同日同時刻に死なせる。
本作のタイトルになっている「不再讓你孤單」という言葉は、生においても死においても、同等に意味を持つと思うのです。


ともあれ『藍宇』がだいすきなひとにはぜひともご覧いただきたいですこれ。
ふつうにロマンティックな恋愛映画だし、それだけでもう十二分に佳いのですが、『藍宇』がだいすきなひとがご覧になれば気持ちやからだのあっちこっちにごんごん響くなにがしかを、きっと受け止めてくださると思います。
あと、いうまでも無く劉燁さんだが。





舒淇がかなりアグレッシヴでエキセントリックなキャラクターで、劉燁は徹底して受けに回っています。
相手の言動に振り回され、困惑したり怯んだりしつつ、けれども決して崩れず、どんな球でも確実に受けて的確に投げ返す。
全編ほとんどおまわりさんの制服と洗いざらしたポロシャツしか着てないし、お顔を小麦粉だらけにして(お約束)やたら餃子ばっかこさえてるし、三十過ぎの男子の汗臭い生活感もきっちり出していながら、絶対にこの世のどこにも存在しない、どこまでもロマンティックな美しい生きものとして、やすやすと境界超えてみせる。
もう、独擅場だなと思います。
すこしまえに、劉燁さんを正面切って「男前」と呼べるまでにはあと数年かかるかと思う的なことを書きました。
「あと数年」なんかすっとばしていますぐ男前と呼んじゃったっていい。
この作品を観て、そう思いました。
| 14:14 | 電影感想文。 | comments(10) | trackbacks(0) |
Comment








カエルでございます。
ううう。これ日本版DVDでてくでーっ(泣)。
日本版の『硬漢2』も・・うぐぐ。
だめかなやっぱし・・しくしく。

>消えない記憶を恋人のなかに刻みつけたまま夭逝する
・・こういう役どころとくればリウイエさんて感じですが。
逆ってのはない・・ですよね?(あ・・あるのかな?・汗)

逆だったら、残される側だったら・・
きっと捍東は迷って成仏できませんな(笑)。

いや捍東に限らず相手役のみなさん、心配で心配で“こいつを残して逝けんわっ!!”て、天の川ならぬ三途の川の前で渋滞しそうです(苦笑)。

・・なんかそんな役も見てみたいよーな(笑)。いや、三途の川の前の渋滞シーンでなく(笑)。

>絶対にこの世のどこにも存在しない・・
「お約束」(笑)もこなしておいて、
けろっとやってのけるほんとに不思議な役者さんなんだなーと思いました・・。

posted by カエル | 2011/07/09 10:50 PM |
こんばんわ。


『不再讓你孤單』ぜひ観たいです。
日本での公開があれば…せめて日本版DVDが出てくれれば、と切に願います。
彼の国のお言葉がまったくわからないので、公式サイトを見たときも「ふうん」としかいいようがなくて、レッド様のあらすじを拝見し、とても興味が沸きました。

>三十過ぎの男子の汗臭い生活感

この言葉が一番興味をそそられましたすみません…。
私の中のリウイエ氏って、いまだに20代なんです。
過去を辿っている最中ですので、まだまだ若くてかわいくてきれいな人なのです(勿論それだけではありませんが)。
20代と30代で明確なラインがあるとは思わないのですが、それでも、年と経験を重ねた分、うまみ成分が増してどんな感じになったんだろうかと思います。
そしてこれまでは、良い意味で「二次元的」で生活感が特に感じられない役どころが多かったような気がしますので(作品自体がファンタジーとか)、あんまり観たこと無い演技と役どころ、とても気になります。


>絶対にこの世のどこにも存在しない、どこまでもロマンティックな美しい生きもの

神話に登場する神様かいきものか何かでしょうか…ああ、ますます観たい。


そういえば。
私は昨日、とある映画を観て、唐突に『藍宇』を思い出して「あ、このシーンは『藍宇』の…」みたいなことを考えてしまいました。
『藍宇』に何の関係も無い映画だったのですが、一瞬通じるものがあって、一度その考えが出てくると、「あれも」「これも」と勝手に結びつけてしまいました。
順調に病んできたなと思いました。
posted by HAL | 2011/07/10 1:25 AM |
>カエルさま、HALさま

コメントありがとうございます。
じつは私、ただいま岩手県の山田町にボランティアに来ていまして。
お返事は、12日火曜日に戻りましてからあらためてさせていただきます。
悪しからずご了承くださいませ。
だるだるポロシャツ+2本線イモジャー+ウエストポーチという方鎮東ルックで活動中@まず形から入るレッドでしたっ!

posted by レッド | 2011/07/10 6:07 PM |
レッドさんこんにちは
ボランティア活動ご苦労様です。
すごいな!できない理由を探す事をせずちゃんと行動していってる。
レッドさんこそ男前ですよ!
炎天下の作業は過酷だと思います。どうかあまり無理をされないように・・・。

そして中国の男前も映画でみたくなりました。タキシードよりも顔立ちのよい劉さんはなにげない普段着や制服のほうがより魅力的に思えます。何度も共演してきっと息の合う舒淇さんとどう縁起の化学反応をおこしてるのかも気になります。
見れる日まであまり調べないでおきます。
posted by blueash | 2011/07/10 9:43 PM |
お疲れ様でございますー。この暑さの中…おそばでお手伝いできないのが悲しいです。
そしてこの作品…はい、もうニヤニヤで観ておりました。もー、あれもこれもオマージュっぽくて。でも回復後のビデオレター(?)撮影にはまたジーンと来て…。元気になったようだけど、やはり先を考えてなのかなと。子供の名前がいいですよね。銘、心に刻みつけるって。
リウイエ、やればできる。男前になったぞと私も言いたいです。
posted by にんにん | 2011/07/11 6:57 AM |
こんばんわ。
ボランティア活動、大変おつかれさまでございます。
行動できるレッド様、尊敬いたします。
余震や暑さなどにどうぞお気をつけて。
無事のお戻りをお祈りしております。
posted by HAL | 2011/07/11 10:29 PM |
>カエルさま

11日にはステキ捍×藍画像で作業意欲を5割増しにしてくださって、どうもありがとうございました!
被災地に敢えて「娯楽」はもちこまないようにしようと思ってiPodも置いて出掛けたので、まさに命のお水でございましたよ……。

>逆ってのはない・・ですよね?

『パープル・バタフライ』は目の前で恋人を殺されてしまう役でしたけど、後を追うように彼自身も死んでしまいましたからねえ……。
たとえば、記憶を無くしていくのが捍東で、それを見守るのが藍宇だったら……とか、『カンフーサイボーグ』の胡軍さんをみていてちょっと妄想しかけましたが、なんかものすごくかなしくなっちゃったのでやめましたぐすん。

この映画の劉燁さんはほんとに良いです。
こいぬ系得意技集大成な感もありつつ、
「でも30代になるとこういうふうに見せ方が変わるのねえ」
というしみじみとした発見も多々。
いたいけで受け受けしく(これまたお約束)とても繊細でありながらも、一本筋が通った力強さが感じられました。
彼自身がこの映画の方鎮東と同じように、「お父さん」になったせいも多分にあるんだろうなあ、と思います。
posted by レッド | 2011/07/13 6:38 PM |
>HALさま

お言葉ありがとうございます。
どうにか無事、帰還いたしましたー。

やっぱり私も「すべての道は『藍宇』へ通ず」みたいな状態なのですが。
記事のなかにも書きましたが、それは『藍宇』が普遍だからで、たぶんもうずっと昔に私は『藍宇』に出逢ってしまっているんだと思います。
いつ、どんな形でかは思い出せないのですが。
それは自分にとってものすごく大切でものすごく親和的な記憶のようなもの、かも知れません。
『藍宇』をあじわうことで、失ってしまったその記憶を反芻しているんじゃないかという気がしてなりません。

>私の中のリウイエ氏って、いまだに20代なんです。

私も、彼の20代をものすごい密度とスピードで俯瞰するということをやってきて、漸くリアルタイムの劉燁さんに追いつきつつある感じで。
20代と30代の線引きというよりも、結婚してひとの親になった(この映画の撮影中はまだお子さん生まれてませんが)ことが演技に影響しているのかなという気がします。
役者は自分の抽斗に貯えた経験によって演技の質が大きく変わる生きものでもあるので。

しかしところがこのあとに撮った『硬漢2』の老三は、むしろ生活感からどんどん乖離して、どんどん純化していってるようにも感じられ。

ほんとに不思議なひとです。


ほんとに、ぜひとも日本で公開していただきたいです、この作品は。
この劉燁さんをもっともっとたくさんのひとに見てほしい──つうか見せたいそして自慢したい(笑)。
posted by レッド | 2011/07/13 7:02 PM |
>blueashさん

お言葉ありがとうございます。
あとさき考えるより感じた瞬間に身体が動いてしまう人間でして、それが行動力ってことなのかどうなのかよくわかんないのですが。
しかし、行って良かった。
行くべき所だったと思いました。

>なにげない普段着や制服のほうがより魅力的に思えます。

そうなんですよね。
素材のいいかたはうわべを飾ったりしなくても、極端な話すっぱだかでも、それがむしろ美しい。
「何も着てないのがいちばんだ」って、捍東の台詞じゃないですが(笑)。

つましく清潔に日常を営んでいるかんじが、不治の病という運命の悲哀とあいまって、この映画の劉燁はほんとにたまんないです。
李佩如が方鎮東に惹かれていく過程も、だからすごく説得力がある。舒淇がまためちゃくちゃうまいんです。

劇場で観られる日がくることを祈ります。
そのときにはぜひ、ご一緒させてくださいませ!
posted by レッド | 2011/07/13 9:10 PM |
>にんにんさん

このくそ暑い中いらっしゃったりしたら大変なことになりますからどうかどうかおうちにいらしてくださーい(笑)。

>あれもこれもオマージュっぽくて

やっぱりオマージュ、なんでしょうかねえ?
あんまり『藍宇』『藍宇』連呼するのも失礼だよなあと記事書いたあとにちょっと反省モードだったりしましたが。
しかしなにしろ、意識のない状態の方鎮東の顔が藍宇の死に顔そのまんまなんですもの……。
あれ見た瞬間、もう、一気にいろんなもんが崩れ落ちました。

ほんとに、男前に成長してくれましたね。
昔から彼をすきなかたは、私なんかの百倍感無量だろうと思います。

あ、でも男前ないっぽうで、額の汗を腕でぐいって無造作に拭うしぐさに漂う小学5年生男子感が、これまたたまらんかった……。
posted by レッド | 2011/07/13 9:53 PM |
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