蛇果─hebiichigo─

是我有病。

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好像白雾。──『藍宇』其の吾拾
昨年のきょう、『藍宇』殺青から16年が経ちましたという記事に、

「どうもこの2月10日あたりというものは、自分にとってドメスティックな方面でいろいろ変化のあるシーズンみたい」

なんて書きました。一年が経ち『藍宇』殺青17年を迎えたきょうあたりも、やはりドメスティックな方面での変化をシンミリ感じながら過ごしています。

3週間ばかり前に体調を崩してそのままB型インフルエンザに罹患、禁足期間も終わってすっかり復調してみたら、これまで常飲しすぎなくらい常飲していたお酒をあんまり飲まなくなっていました。飲めなくなっちゃったんでは無く毎日飲んではいる。ですが350ml缶のビール、グラス1杯のワインを1時間かけてちびちび、みたいな事態です。1週間かけてワイン1本飲みきらないんですよ昨年夏に酔っぱらってすっころんで右の頬骨を骨折してそんな痛い目に遭ってもなお「金輪際酒はやめよう」とは微塵も思わなかったこの私がですよ信じられないですよ。お酒飲まないから食事の全体量も減ったし。B型インフルエンザは胃腸にくるのでその影響も残っているのかも知れません。でも、もうちょっと経てばもとにもどるのかな。そろそろやばいなんとかせねばと思ってたおなかまわりが3週間ですっかりぺったんこになってくれたのは嬉しいのでそれはもとにもどんなくていいです。

これはしかし、
「ルーティーンを手放せ」
というのがいまのシーズンの乙女座の命題だからじゃあ無いか、という気もします。

石井ゆかりちゃん曰く「アタマがカラダ」、逆流すると「気持ちの問題がすぐカラダの異常になる」乙女座だから、私が寝ているあいだにアタマとカラダが勝手に話し合ってそういうことにしましょうと結論したのじゃあ無いか、という気がします。

1月22日、関東地方ではけっこうな雪が降り、その二日後、寒い部屋でお熱をだしてうんうんいいながら、自分の吐きだす息の白さに『藍宇』を思いました。是我有病。
ふたりの出逢い、そして再会も酷暑の時季でありましたのに、映画を観終わってみればかれらの吐息の白さばかりが目交にちらつく。

抱きしめる。くちづけする。互いの熱に分け入っていく。
吸って吐いて。
吸って吐いて。
吸って吐いて。
くちびるからこぼれおちる「生きている」のくりかえし。
その証。

2001年2月10日午後3時半、すべての撮影が終わって、おめでとうと言ったのかおつかれさまと言ったのか。上気したひとびとの吐く息も、真白くはずんでいたことでしょう。


冬ながらそらより花のちりくるは
雲のあなたは春にやあるらむ。


まだ冬なのに空からお花が降ってくる。
雲のむこうはもう春なのかしら。




降る雪をはなびらに類えて未だ来たらぬ春を想う。
平安時代の歌だけど、虹をつかまえようとカメラ持って走りだす藍宇がいかにも言いそうなことよなあ、と思います。古今和歌集所収のこの歌の詠み手は清原深養父(きよはらのふかやぶ)。「深養父」て名前からはじいさんしか想像できませんが(実際清少納言のひいじいさんですが)、みっしり雲の垂れ込めた真冬の空をみあげて「春にやあるらむ。」と呟く歌人のその息の白さも思い合わせてみたり。


夜になって、さきほどから、雨が降り始めました。
きょうはあたたかいので雪にはならないでしょう。
吐息も白くみえない部屋で、『藍宇』に逢いにゆきます。









●2011年2月10日 地久天長。──『藍色宇宙/MAKING BLUE』
●2012年2月10日 後朝。──『藍宇』其の弐拾弐
●2013年2月10日 人人平安。──『藍宇』其の燦拾貳
●2014年2月10日 搬家。──『藍宇』其の燦拾勒
●2015年2月10日 切切偲偲。──『藍宇』其の是拾
●2016年2月10日 降冬的故事。──『藍宇』其の是拾翅
●2017年2月10日 化不可極。深不可測也。──『藍宇』其の是拾悉



| 22:55 | 藍迷。 | comments(5) | - |
Della Robbia Blue。──『藍宇』其の是拾戯
恋というものを知ったの。
それも突然、これでもかってぐらい、たっぷりと。
まるで、それまで影になっていたところにいきなりパッと、
目のくらむような、光をあてたように──

そんなふうに世界がわたしの目の前に現れたの。




冬至です。
世間的には風呂に柚子を浮かべたり、かぼちゃを煮て食べたりする日です。
どちらも江戸時代に始まった風習だそうで、なぜ冬至に柚子でありかぼちゃなのかという理由も諸説あるようです。かぼちゃは夏の野菜で陽の気をもつから、それを陰の季節である冬に食べることで陽の気を補う、というのがそのひとつ。柚子もかぼちゃもその色が(そのかたちも)、陰のきわまるこの日を境に復活へと転じる(=一陽来復)太陽を思わせるからかな、なんて思ったりもします。

冬至が近づくにつれて──というか冬至が近づかなくっても。オールタイム病んでいますので──なにかと『藍宇』のことを考えていました。
すこしまえにAmazonプライム・ビデオに入った『キャロル』をまた観て、自分の書いた記事を読み返してみたりね。
おとといはBunkamuraシアターコクーンで大竹しのぶと北村一輝の『欲望という名の電車』を観ました。
ここでも何度か書いていますが「2」という数秘をもつ私が素通りできない、取り憑かれる、病んでしまう、そういう「ふたりの物語」がいくつかあります。『欲望という名の電車』もまたそう。20代のはじめごろ、エリア・カザン監督によるヴィヴィアン・リーとマーロン・ブランド主演の映画を観て、そのあとテネシー・ウィリアムズの戯曲を読んで、ブランチがかわいそうでずっと泣いていました。
はじめて舞台を観たのは10年前。2007年11月の東京グローブ座。ブランチが篠井英介、スタンリーが北村有起哉でした。
そして此度が二度目です。

数秘「2」の自分が素通りできない、取り憑かれる、病んでしまう、その集大成でもあるような『藍宇』。それを知ってのちにはじめて観る『欲望という名の電車』。
なににせよ『藍宇』前/『藍宇』後では世界はまるでちがう現れ方をするものだしブランチの科白を借りるならそれこそが「恋」だ。


16歳のときに恋におちて結婚した美しい少年は、じつは同性愛者であった。
いやらしい、と詰られて少年はピストル自殺を遂げる。
彼の死によって負わされた絶望と慚愧。
目をそむけ耳を塞ぐようにして、つぎつぎに男に身をまかせた。
そういう過去をもつ、落魄した名家の令嬢ブランチ・デュボア。

もしも陳捍東が、藍宇と出逢うことの無いままに生きていたとするならば。
いえ。
出逢ってのちに無慙な事故で藍宇を喪った陳捍東は。
あるいはまた「藍宇」という光にはじめて照らされた陳捍東は。
ブランチ・デュボアのようだったかも知れない。
なんて思ったりした。


「欲望」という電車に乗って「墓場」という電車に乗り換えて、六つ目の角で降りてしゃなしゃなと「天国」にやってくるブランチ・デュボアは、ドレスもネックレスもイヤリングも手袋も帽子も、なにからなにまで白ずくめ。
西欧において白は、純潔や貞節、光明や真理、そして処女そのものを表す色です。
てあたりしだいに男と寝ていた女がそうした色を纏う意味と理由については、こちらの論文が解き明かしてくださっています。

白からデラ・ロッビアの青へ― ブランチ・デュブワの心の動き
https://seijo.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=3804&file_id=22&file_no=1

古代中国において、白は不吉な色であり、喪の色でもありました。
白を纏うものに出逢えば一族もろともに死ぬであろう、といわれていました。
五月の初めの逢魔時、ブルー・ピアノが聞こえるニューオーリンズの「天国(Elysian Fields)」にふらりと現れるのは、そういうものでもあるのです。

たとえば天安門事件の夜、『北京故事』においても『藍宇』においてもかれが白いシャツを(だれかの返り血が点々と付着した白いシャツを)着せられているのも、もしかしたら、そんな理由があってのことなのかも知れないです。


妹の夫にレイプされて発狂したブランチが「天国」を去る日。
彼女が纏う色は青。

ユーニス きれいだねえ、その水色のスーツ。
ステラ  水色じゃなくてライラック色。
ブランチ 二人とも違うわ。これは「デラ・ロビア・ブルー」って色なの。古い肖像画でマリア様が着ている服の色。

青は聖なる色であり、生命の力を表す色であり、同時に、早世したひとの棺を覆う布の色でもあるといいます。


15世紀イタリアの彫刻家で、釉を使ったテラコッタ技法を開発したルカ・デッラ・ロッビア(Luca della Robbia)というひとがいます。かれの甥のアンドレア・デッラ・ロッビア(Andrea della Robbia)が、その技法を用いて作品を作った芸術家のなかで、最も有名な人物なのだそうです。
アンドレアの作品に使われている青こそが、ブランチのいう「デラ・ロビア・ブルー」(デラ・ロビアの青)なのでしょう。
「Della Robbia Blue」で画像検索してみますと、かれの作例をみることができます。








そうそう、シアターコクーンの舞台においてブランチが最後に纏っていたのも、正しくこの青でした。
四つめの画像の作品は“Prudence”という題名で、これは聖母では無く、「分別」「慎重」(=prudence)を擬人化したものであるようです。
老人と若い女の双つ面。
右手に手鏡。左手には蛇。
鏡と蛇はそれぞれにいろいろなものの寓意でもあります。
「鏡」を多用する映画に病み、「蛇」を冠したブログを営む私が、一年でいちばん長い夜にこういうものに巡り会うというのも、ふしぎだけどほんとうのことでした。


●茫茫人海。──『藍宇』其の拾九
●待宵。──『藍宇』其の燦拾壱
●ひらく夢などあるじゃなし。──『藍宇』其の燦拾互
●聖馬利亜。──『藍宇』其の燦拾穹
●夢の曲。──『藍宇』其の是拾澯
●月待者。──『藍宇』其の是拾鹿



戯曲の引用はすべて『新訳 欲望という名の電車』(テネシー・ウィリアムズ著/小田島恒志訳 慧文社)による。
| 23:23 | 藍迷。 | comments(2) | - |
想抱紧你。


私たちの腕は武器を持つこともできるし、だれかを傷つけることも、殺すことすらもできる。
しかし畢竟、だれかを、なにかを抱きしめるためにこそあるのだと思いたい。
人ひとりの腕が抱きしめることのできるもの。
愛なんて、それくらいで十分だと思う。



人人平安。──『藍宇』其の燦拾貳



これ4年前に書いたことなんですけれども。
自分で書いたことながら、4年経ってもやっぱり忘れたくない、永遠に肝に銘じておきたいことだなと。
きょうが6月4日だから、という理由ばかりで無く。


例によって彼の国のSNS方面からは哀悼の意をあらわす蝋燭のアイコンが消えてなくなっていますし、


香港、台湾、日本、いわば海外などのIPから画像や動画をアップすることができなくなっている


という事実。
そんな事件なんかいっさいありませんでしたよ。
ということにしようとすればするだけ、
あなたのその「躍起」のぶんだけ、
罪はあかあかと照らしだされるとは思わないのか知ら、ねえ。



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一九八九年六月四日。
貴方のその手がかれを抱きしめたのは、きょうと同じ、日曜日でしたっけ、ねえ。

| 19:24 | 藍迷。 | comments(2) | - |
白刃可踏。──『藍宇』其の是拾潑
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5月13日を以て『藍宇』と出逢って8年が経ちました。
諸事情あって当日に記事を上げることができなかったんですけれども。
それが気に掛かっていたせいか昨日の明け方、「夜の渋谷で胡軍さんに遭遇して普通話と英語ちゃんぽんで話しかけたんだけれどもいとも冷淡な目で一瞥され洟もひっかけられずあしらわれて死にたくなる」的な悪夢をみまして。
やっぱこれ記事書かなきゃイカン!と悔い改めまして。


昨年の5月13日に「魔の五月」ということを書きましたが、ひとつ前の記事の事件にしろ、こと『藍宇』をめぐっては正しく五月は魔と化します。


8年前のいまじぶん、ネットで『藍宇』の感想文はすでに渉猟しつくしていました。
いざ『藍宇』のDVDを密林さんで購入するにあたっては、しかし、購入した方のレビューはほぼ読みませんでした。
『藍宇』を鑑賞したのちにネガティブなご意見(たとえばこれなど)も読んでみたんだけれども、レビュアーさんがネガティブな要素として列挙されていることのどこがどうだめなのか、『藍宇』を経た自分には、ぜんぜんわかりませんでした。
既にそのぐらい、取り返しのつかない勢いで『藍宇』という病に罹患していたのでした。

2009年5月13日、14日と、二日続けて『藍宇』を鬼のやうにリピしたあげく、
「とりあえず『藍宇』は無かったことにしようと思う」
とかっつって無駄な抵抗を試みたのが本日、5月15日。
ま、これはこれで顧みれば一種の記念日であるなあと思います。

賛否というならば、『藍宇』が日本で公開された頃なんかは今の比では無いくらい、いろいろあったんだろうなあと思います。
「誰がなんと言おうとこれがいいんだだいすきなんだ」と一旦思い決めた対象についてはとことん惚れぬき褒めぬく人間ですから、日本公開当時に『藍宇』に病んでいたら、そしてもし上記のようなネガティブな論評を目にしていたら、さぞ殺伐たる、喧嘩上等なことになっていたでしょう。殺伐を避けるべくだまっていれば自分のなかで、「おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざ」みたいなことになっていたにちがいなく。

だから出逢いの時期って大事。
だから『藍宇』と私は、『藍宇』というムーブメントのほとぼりがさめた2009年に出逢うように、どっかの誰かが粋に取りはからってくれたにちがいない。

いまさら乍らそんなことも思うわけです。

そういえば私、密林に『藍宇』のレビュー書いていなかった。
DVDを観たあと自分なりの感想文を書くだけで3ヵ月近くかかっちゃったし、書きあげてみれば「腹ふくるる」がいよいよ増進して、んじゃもういっそのことブログ作りますかあ!みたいなことになって現在に至ります。
改めて、ここ最近の密林『藍宇』レビューなんか読んでみましたら、こんな論評がございました。


主演俳優の良さに比して、ランユー役の若手が、どうも・・・・。
主人公がのめり込むだけの、美貌かあるいは官能性が欲しかった。



最初に観たときは私もそう思いました。
ですが、二度三度と『藍宇』との逢瀬を重ねていくうちに、そういう印象はころりと覆りました。
そのとば口がまさに8年前のきょうだった。
二度三度、十度二十度、いえ百遍だって観たくなるか、「一度でたくさん」になっちゃうか。こればっかりはもう、胡軍さんの御言葉を借りる迄も無く「ご縁」としか。
藍宇/劉に「主人公がのめり込むだけの、美貌かあるいは官能性が」無かったと感じられたのなら、それはそれだけの縁なんでしょうし。
このレビューを読んで、「『藍宇』って受がぶさいくなのね。じゃ観るのやめた」と思われたとしても、それはそれだけの縁なんでしょうし。
言葉を乗り越えてなお成り立つものがあればこそ、「おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざ」なんだろうなあ、と思います。矛盾しているようですけれどもね。


1月末に転倒→骨折→手術→リハビリという経過を経た母が、あさって退院の運びとなります。実家おさんどんはこのあとも定期的に続けていくつもりですが、取り急ぎ、この3ヵ月半の己の労をねぎらうべく旅に出よう、と思います。
先月あたりからなんだかむらむらしちゃって、徒然にガイドブックなんか読み漁っていました。ガイドブック読んで、あたまのなかでその街を歩いているだけでも随分と慰めになりましたけれど、やっぱり行って見るに越したことは無いですから。
母を迎える支度を終えて横浜に戻って飛行機とホテルの予約をしました。海外に行くのは2000年7月、ツインタワー在りし頃のニューヨーク以来。ほんとうはまずは北京に行きたかったんです。『藍宇』聖地巡礼したかった。でもまあしょうがない。これもまた、魔の五月の為せる業だもの。


雨季まっただなかの香港です。
五泊六日のひとり旅。
行って参ります。



美しい名前。──『藍宇 Lan Yu』
シガ フタリヲ ワカツマデ。──『藍宇』其の拾参(2011年5月13日)
三年不蜚不鳴。──『藍宇』其の弐拾詩(2012年5月13日)
情熱の嵐。──『藍宇』其の燦拾讃(2013年5月13日)
生活と云う名の。──『藍宇』其の燦拾桎(2014年5月13日)
藍くて咲こうとした恋は。──『藍宇』其の是拾溢(2015年5月13日)
遥かに照らせ山の端の月。──『藍宇』其の是拾呉(2016年5月13日)


| 23:37 | 藍迷。 | comments(5) | - |
化不可極。深不可測也。──『藍宇』其の是拾悉
『藍宇』が香港で公開されてから2016年11月22日を以てまる15年が経過したということを冬至の記事に書きましたが、その15という周年の年を経て、『藍宇』殺青(クランクアップ)から16年が経ちました本日を以て。

彌栄。


藍宇16.jpg


中国の迷様が15周年のときにお作りになったこの海報にも、2001年2月10日午後3時に終わった旨が記されています。


下のほうに過去記事をリンクしていますが、2011年このかた、どうもこの2月10日あたりというものは、自分にとってドメスティックな方面でいろいろ変化のあるシーズンみたいです。私自身は家庭を持っているわけでもなんでも無いのですが、たとえば住処を移してみたり不治の病に罹ってみたり、なにがしか自分の生活そのものをシンミリと顧みる必要に迫られる。先月末に母が転倒骨折入院手術という憂き目に逢い、独居老人となった父の世話をするべく仕事を抱えて実家と横浜を行ったり来たりしているいまも正しくそういうシーズン。

それはもしかしたら『藍宇』がとってもドメスティックな物語だからかしら──なんて思ったりします。

私自身は家庭を持っているわけでも、家庭を持つ機会に恵まれたわけでもなんでも無いのですが、たぶん、とてもドメスティックに出来てんだろうなという気がします。
それは家事全般に於いて素晴らしく有能って意味じゃあ無いの。家のなかとか部屋のなかとかふとんのなかとかに居ることに向いてるということに於いてなの。家から一歩も出ないでやれる業態に憧れて、そういう業態のひとになるべく努力したというのも畢竟、そういうことだと思うの。
そんな人間が『藍宇』という、86分に封じ込められた美しい部屋に、この際室内劇と言ってしまいますがそんなような映画にいかれてしまうのは、それはもう自然の摂理じゃ無いですか。
閉じられた部屋をひとつの宇宙として精緻に彫琢する手業に長けた關錦鵬の仕事──『ルージュ/胭脂扣』にしろ『阮玲玉』にしろ『長恨歌』にしろ『画魂』にしろ──に無闇と惹かれてしまうのは、物語そのもの以前に其処に在るのが「部屋」だから。そうして其処から出たく無いひとだから私が。
退嬰ってもんかも知れません。でもまあべつに退嬰だっても良いじゃ無いですか。


ドメスティックな物語とはいっても、陳捍東と藍宇に同性婚をしていただいてハッピーなご家庭を築いていただきたいということでは無いし、「結婚」なんて形態は永遠に取っていただかなくても良くってよと思うのあのひとたちの場合。当人たちもそんなことしたかないだろう。未来とか展望とか。長寿とか繁栄とか。血脈を繋いでいくことだとか。そんなことしたいと思ってるひとたちじゃ無かったでしょうたぶん最初から。私が勝手に思うだけだけど。


陳捍東と藍宇を演じたおふたりは、『藍宇』という美しい部屋での仕事を終えて、扉を開けて出ていって、のちにしあわせなおとうさんになりました。
16年まえのきょう、『藍宇』が殺青を迎えたときにはまだこの世に居なかったひとたちも、いまじゃこんなになってます。


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6歳になった諾一は、自分の名前が書けるようになったようですよ。




●2011年2月10日 地久天長。──『藍色宇宙/MAKING BLUE』
●2012年2月10日 後朝。──『藍宇』其の弐拾弐
●2013年2月10日 人人平安。──『藍宇』其の燦拾貳
●2014年2月10日 搬家。──『藍宇』其の燦拾勒
●2015年2月10日 切切偲偲。──『藍宇』其の是拾
●2016年2月10日 降冬的故事。──『藍宇』其の是拾翅


| 22:39 | 藍迷。 | comments(4) | - |
月待者。──『藍宇』其の是拾鹿
先月のことになりますが、レコードチャイナにこんな記事が載っていました。

衝撃的だったゲイ映画「藍宇 〜情熱の嵐〜」が公開15周年、プロデューサーが語る裏話


「香港で『藍宇』が公開された日、『藍宇』というレジェンドがはじまったその日が、2001年11月22日」
ということは一昨年のきょう、書きました。
2016年11月22日を以て、まる15年が経過したということなのです。





2016年の冬至は昨日、12月21日だったのですが、上記のような事情で敢えてきょう、「22日」に記事を書いております。柚子湯につかって『北京故事』を読んで、

新居で最初に愛し合った場所は浴室だ。

というとこらへんでほんのりするという09年12月22日以来の恒例行事は無論昨夜敢行致しました。


周年はどうして「五」の倍数で表していくのだろう。
きりの良い数字だからと言うけれど、じゃあなんできりの良い数字を考えるときに「五」が出てくるのだろう。

という疑問を抱えて徜徉していたところ、日本が十進法を採用しているため、十の半分の五も一定の区切りと捉えられること、さらに人間の手の指が5本であること(無論、すべての人がそう、というわけではありません)から数を数える基本の単位が「五」なのである、ということが回答として挙げられていました。
ローマ数字においても「五」(V)が基本的計数単位であり、それもやはり、手の形からきているということです。
拙ブログでも5周年のときには「五黄」について書いたりしましたが、中国においては「五」はやはり「五行」との関係が深いようです。
また、「三」が生、「五」が死をあらわし、三五をかけた「十五」は月が盈ちて闕ける時間=15日に為るのである、とも。


マジカル。
2001年に生まれた『藍宇』という月は、今年で望(満月)を迎えたということにもなるわけです。
この15年でなにがしか、盈つることがあった。
だからこそ『藍宇』主演俳優のおふたりは、揃って今年、ふたたび影帝になった。
そういうことじゃないかなあ、なんて思っています。
「月満つれば則ち虧く」が理ならば、これより15年をかけて朔(新月)へと向かうことになりますが、まさに冬至というものが太陽にとってそうであるように、それは再生のために通過する死。無明というものには屹度意味がある筈、と考えます。


『藍宇』という月相。
その変化が照らすかれらの変化。
そして私たちの変化。
みつめるためにまた、漕ぎ出します。


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●茫茫人海。──『藍宇』其の拾九
●待宵。──『藍宇』其の燦拾壱
●ひらく夢などあるじゃなし。──『藍宇』其の燦拾互
●聖馬利亜。──『藍宇』其の燦拾穹
●夢の曲。──『藍宇』其の是拾澯


| 09:39 | 藍迷。 | comments(2) | - |
七年之後、従心之所念。
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“Gethsemane”
Carl Heinrich Bloch




ラッキースター木星が私の星座乙女座に滞在しているいま。
占星術方面において一般にこのシーズンは、「12年に一度の大幸運期」なぞと呼ばれています。
現実はどうかといえば毎度のこと乍ら仕事も仕事じゃ無いこともぱつぱつです。
前の記事にも書きましたが年明けに最愛のバンド、ザ・イエロー・モンキーが復活を遂げ、くわえて大河ドラマ『真田丸』に溺れ、なんだかんだで浮かれぽんちな日々を送っております。
ザ・イエロー・モンキーが解散し、『真田丸』の前の三谷大河『新選組!』が絶賛放映中だった2004年。やはりラッキースター木星は乙女座に滞在していました。それはもう、たいへんでした、いろいろと。なにかと、ええ。石井ゆかりちゃんによればこの時期は幸運期ならぬ「耕耘期」、「その人の可能性の畑を耕して整地し、ここから12年をかけて育てていける幸福の種を新たに蒔く時期」だそうですが、12年前のあれは正しくそういうシーズンでした。蒔いた種を12年かけて育てた挙げ句のいまここであることは、ほぼ間違いありません。

昨晩は、2007年から『藍宇』に出逢う直前まで、夜な夜なこそこそ綴っていたお話たちを読み返しておりました。
自分が書いた文章を自分で読んでおもしろがるというのもなかなか不遜できもちのわるいかんじでありますが、でも、おもしろかったです。
ぶれてないな、と思いました。

2007年4月から6月に放映されていた『バンビ〜ノ!』というドラマの、所謂SS、二次創作というやつなんですけれども。
舞台となる六本木のトラットリア《バッカナーレ》、そこで働くソットシェフ(副料理長)桑原敦とカーポ・カメリエーレ(給仕長)与那嶺司のふたりがじつにめっぽうわたくしごのみのステキCPで、ぞっこんいかれてしまいまして。
もともとそれぞれの中の人(佐々木蔵之介、北村一輝)の結構なファンでしたしそんな彼らの『医龍』以来の待望の共演つうことも手伝って、いろんなところの箍がはずれまくっていろんなものがどろどろ漏れたりとか、してしまいまして。
もはや取り返しがつかぬくらい決定的に決壊したのがこの回。

con amore。〜『バンビ〜ノ!』六皿目。

それでまあ、決壊ついでに「うまれてはぢめてのSS」などという暴挙に出てしまったと、いう次第です。
『バンビ〜ノ!』って佐々木北村両者のファンのあいだではぜんぜん評価高くないんです。でも佐々木蔵之介がイタリア語をしゃべっているのにほとんどドイツの軍人さんみたいだったり、北村一輝はその2年後に上杉の御屋形様だったり、へたれアップレンディスタの中の人が『ゲゲゲの女房』でブレイクしたり、蔵之介さんのライバル役だった人が『イップ・マン』でドニーさんとガチだったり、個人的にはなにかと興味深い作品だったんです。あと何度も書いていますが「ふたり」というものが異常な迄にだいすきなので私。
件のSSのなかで与那嶺司をモデルにしたキャラクターに「家族」の概念について、

いちばんすきなひとと、朝も昼も夜も、ずっといっしょに暮らすこと。

なんてことを言わせているように、自分、家族と問われてまず浮かぶものは「あなたとわたし」なの。
あなたを残してどいつもいらないの。
二人を残してなんにもいらないの。
私はあなたそのもの、なの。

実人生に於いてはそうしたことが叶わなかった。
なので私はいまもずっとひとりでいるのでしょう。


ふたりはやがてひとりになる、という前提というか予兆というか確信というか。
そうしたものをひたひたと感じればこそ、私はここまで「ふたり」という物語に惹かれてしまうのです。
(翻って言えばそうしたものをまったく感じさせなければそれは「ふたり」では無くてただの複数の人、です)
だから、『藍宇』という物語との出逢いがどれほど大きなものだったか。
『真田丸』第33話の加藤主計頭清正に、
「よっぽどなんだろ? よっぽどなんだよな?」
と問われたら迷うこと無く「よっぽどです」と答えますよ。

朝、眠る情人のかたわらでひっそりと身仕舞いをし、部屋を出てゆく藍宇。数時間後に不慮の事故でその命を絶たれることなど彼は知らない。それなのに、もはや二度とはもどるまいといった、なにがしか純で硬質な決意のようなものを、そのときの藍宇は負っているかのようにみえる。物語がまだ動き出してもいないうちから終幕の彼らの運命を、映画はくっきりと其処に刻んでいる。そして陳捍東と藍宇の軌跡はそのまま、私が当時、夜な夜なこそこそ綴っていたお話の「ふたり」のそれに重なるものでありました。つまり、そう、だから、「よっぽど」なのでした。

『藍宇』で描かれる「悲劇」って言ってしまえば常套なんでしょうし、その点をとりあげてこの映画を批判する向きもあります。
ではなんで常套になるかといえば、それだけたくさんの人がじつはその「悲劇」を、密かに渇望しているからでしょう。
いちばんすきなひとと、朝も昼も夜も、ずっといっしょに暮らすこと。
そんなこと望むべくも無いからでしょう。
ふたりがふたりのままに完全無欠になったとき、それはもはや、「ふたり」ではなくなってしまう。
ふたりがふたりとして完全無欠になるためには、どうしたって「ふたり」という容器を一度、毀す必要があるのではないか。
「私はあなたそのもの」とは、そういうことなのではないか。
私がしんそこ美しいと思うのは、そういうことなのではないか。


そんなことを考えていたりします。
昨日で此処も、七年が経ちました。
中国では「七」は循環や周期において大きな意味を持つ数字であるそうです。だったらまあそろそろいっかみたいなかんじで、上記『バンビ〜ノ!』第六話を観たあとに綴ったお話を載っけてみます。2009年の夏にふた月をかけて書いた『藍宇』の感想文と同じくらい、これもまた私の衝動のひとつのかたちでした。ドラマをご存じ無い向きにはなにがなんだかでしょうし、ドラマ並びに役者さんのファンの方にはご不快にかんじられることもあるやも知れません。まことにすみません。こそこそどうぞ。

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| 17:03 | 藍迷。 | comments(6) | - |
一九八九六四二七。
毎年6月4日は、彼の国のSNS方面から、哀悼の意をあらわす蝋燭のアイコンが消えてなくなる日です。
それはもう、笑っちゃうぐらいきれいさっぱり、無かったことに。
しょうもないことをしやがんなという気がしますが、まあでも私の好きな俳優さんたちはそんな国に生まれそんな国で暮らしそんな国でお仕事をしている。「そんな国で生きていくこと」の大変さは私などにはちょっと、想像を絶するところがあります。日々彼の国のSNS方面を眺めていると、かわいいねこちゃんのお写真とか、おいしそうなスイーツのお写真とか、らぶーな明星さんのお写真とか動画なんかが膨大にタイムラインに流れてくるのでうっかり忘れてしまいそうになるのですがでも、その裏には、ぜったいに口にはできない「そんな国で生きていくこと」の大変さが、きっと膨大にこめられているのじゃないかと思うのです。


まあいいや。
暗いと不平を言うよりも、すすんであかりをつけますよ。


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何度吹き消されても、何度だってあかりをつけますよ。
我们不能忘记那一天。
そして勿論、記憶に残るうちは、お終いじゃ無いんです。


| 11:56 | 藍迷。 | comments(6) | - |
遥かに照らせ山の端の月。──『藍宇』其の是拾呉
「魔の五月」とは、そもそも萩尾望都の『ポーの一族/小鳥の巣』に登場した言葉でした。
中州に建つガブリエル・スイス高等中学。五月の創立祭の前日にロビン・カーが張り出し窓から沼に落ちて死に、ロビンが死んだ1年後の同じ日、学校と同じ名のガブリエル・スイスが沼地で溺れて死にます。そしてその1年後。真の「魔」であるところのエドガーとアランがガブリエル・スイス高等中学にやってきて、3年目の「魔の五月」が幕を開けるのです。


たとえば2015年のいまじぶん。
私は正しく「魔の五月」を生きていました。
5月15日に胡軍さんと劉さんがおふたりお誘い合わせでこんなあられも無い事態になり、そこから約半年のあいだというものは、日々邪悪な夢想に塗れて暮らしておりました。

たとえば2016年5月11日。
復活したザ・イエロー・モンキーの『THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2016』初日でした。
密林さんで『藍宇』DVDをぽっちりした日から数えて七年目のことです。

これだって毛頭偶然などというものでは無い。
なにもかも、連鎖する「五月」という魔のシーズンが呼び込んだ事態にちがいないんだわ。

そんなようなことを考えながら、七年前に『藍宇』に出逢ったきょう、5月13日を迎えています。


5月11日にイエロー・モンキーのライヴが始まるまで、ちらとも考えてみなかったことがあります。
イエロー・モンキーが活動していたころ、『藍宇』という物語は未だこの世に存在していなかったのだ、ということです。
イエロー・モンキーのライヴに通いまくった1993年11月24日から2001年1月8日までのあいだ、私は『藍宇』という物語をまったく知らずにいました。そりゃそうだ。そのころ關錦鵬はまだ『藍宇』を撮影していなかったんですからあたりまえすぎてばかみたいな話です。でもつい2日前の19時、国立代々木競技場第一体育館でM-1“プライマル。”のイントロが鳴り響くまで私は、そうしたあたりまえのことに微塵も思い及ばずに生きていました。
つまり『藍宇』を知った私が生で聴くイエロー・モンキー楽曲というものは、『藍宇』を知らなかった2001年以前とはまったくちがう響き方をした、ということです。


M-1“プライマル。”からM-24“JAM”まで。
陳捍東と藍宇のことをいつも何処かで考えてしまっていました。
最愛のバンドの復活に纏わる混沌と情熱とエモーション。思い出すさまざまのこと。ともにライヴに通った、死んでしまった友人のこと。泣きながら笑いながら惑溺しながら、同時にひっそりとささやかに佇むあの美しい藍宇の部屋にも、慥かに私は居たのです。


と、いう次第で。
5月11日と5月12日のイエモンさんのセットリストから、「理由はよくわかんないけど自分にはここがすごく『藍宇』でした」な一節を引っこ抜いて並べて見たいと思います。なんでそこがすごく『藍宇』なのか、そもそもよくわかんないので理由も書きませんが適当にお察しください。毎度のことですが愉しいのはおもに私ばっかりという事態でした。ほんとうにすみません。吉井さんもごめんね。


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| 21:55 | 藍迷。 | comments(2) | - |
歓迎光臨〜分享幸福・潘朶拉盒子。
Sさんからのいただきものシリーズ其の参は、『藍宇』ブツワールドにおける最大にして最凶の問題作。

ご存じの向きも多かろうと思いますが『藍宇』には、「台湾豪華珍蔵版」という徒花のようなものがかつて存在しました。「藍宇的北歐」さんによれば加長版DVD(注:製作者サイドに断り無く削除されたシーンを入れ込んで編集・発売し、訴訟騒ぎも起こしたイリーガル版『藍宇』)、サントラ、Tシャツ、マグカップ、キーホルダー、写真集をセットにしたもの。
それが「プレミアムBOX」という名称で売られていた、そんな時代もありました。
こちらがその匣の現物でございます。



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「靴箱か、はたまたケーキ箱か」と形容される、恰も陳捍東そのひとの如き、がっしりとたくましい漆黒の匣です。
おそるおそる、蓋をあけてみますと。
綺麗な男の子が匣いっぱいにぴったり収まって、
「ほう。」
とか言ってくれる、なんちゅうことは無くってですね。



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Sさんセレクトによる、めくるめく『藍宇』グッズ──珍蔵版セットからTシャツ、マグカップ、キーホルダー、写真集。そして2001年発売の限定セットからクリアポーチとノートブックと立体カレンダー。さらにSさん撮影の、各地イベントにおける胡軍さん劉さんのひとこまを捉えたスバラシイ生写真の数々──の詰め合わせが、ぴったりと収まっておりました。

珍蔵版より、まずは「写真集」をご紹介しましょう。
表1表4を染める藍色がうつくしい。



藍宇148 (1) -1.jpg藍宇149 (1) -1.jpg藍宇150 (1) -1.jpg藍宇151 (1) -1.jpg藍宇152 (1)-1.jpg藍宇153 (1) -1.jpg藍宇154 (1) -1.jpg藍宇155 (1) -1.jpg


「藍宇的北歐」さんのお言葉を借りれば「写真集とは名ばかりの、ただのスチールを集めただけの16頁の冊子」。事実まったくそのとおりなんですが、日本版DVDのリーフレットですら初版だけにしかつけてもらえなかったわしら藍宇ロスジェネ世代にしてみれば十二分にありがたく勿体無いお品です。
つづいては、「藍宇的北歐」さん曰くところの「使えないキーホルダー」。



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「実用」を重んずることすなわち「ブツは使ってなんぼ」が信条の乙女座的には、しかしこれは十二分に使えるお品ですぞ。
YOSHII FUNK LOVE(=吉井和哉さんFC)がくれる継続特典キーホルダーにくらべたら、ずんとしっかりした作りですぞ。
つまり「使えない」というのはキーホルダー本体に刻まれた裸体の男性ふたりが絡み合う、ちょっと居た堪れ無い意匠についてのことなのでしょうね。わしのMacの『藍宇』ひみつフォルダにぶっこんである各種海報を俯瞰してみますと、この裸体の男性ふたりが絡み合う意匠を使っているのは台湾版海報2種類のみ。つまり当時の台湾において『藍宇』という映画はまとめればこういうもんだ、とざっくり解釈されていたということなのでしょうね。それゆえ台湾製作であるところの珍蔵版グッズにおいても執拗にこの意匠が繰り返されているという次第です。「藍宇的北歐」さん曰くところの「見たくもないマグカップ」もそのひとつ。



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マグカップそのものはシンプルで、そこそこいいかんじの重みもあって、「ブツは使ってなんぼ」が信条の乙女座が毎日おいしくコーヒーをいただくぶんには十二分過ぎるほどに使えます。口にはこぶたんびに否応無しに目に入ってしまう、燦然と輝く黄金色でプリントされた裸体の男性ふたりの絡み合いを見なかったことにできればの話ですけれどもね。
ふたりのかたわらにはそれぞれ胡軍さん劉さんのサインが添えられています。



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えーつまりそのなんだ、右手をあげているリーゼントのひとが陳捍東で、がばと抱きついているほうのひとが藍宇なんだな。
などとうっかり思い込んでしまう粗忽者だって後を絶ちませんよ、こんなことをされた日にゃあ。なんで藍宇タイトルロゴとおふたりのサインだけにしといてくれん。いまさら私が悔やんだってあとのまつりですが、悔やんでも悔やみきれません。
さらに「藍宇的北歐」さん曰くところの「開けたことすらないTシャツ」に至っては。



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そでが無い。


「ブツは使ってなんぼ」が信条の乙女座ですが「わーい嬉しいー太極拳の稽古のときに着られるー」と浮かれてビニール袋からがさごそ出した瞬間に絶望。いちおう試着してみたんですけどね。二度と着るものか。これを着こなせるのはびっちびっちに大胸筋の発達したひと、喩えて言うなら捍東の浮気相手のマッチョくんぐらいなものです。

「这些东西,那些人穿着都不好看,就你穿还有个样儿。」

にやけたおっさんの台詞がきこえてくるようですよ。

加長版DVDみたいなものを勝手に作って勝手に出して怒られてしまう会社のしでかすことですから、こうしたやらでものひと手間も、ある意味商魂とサービス精神が綯い交ぜになった結果ということなのかも知れませんけれどもね。それとも予算的にそでに回すぶんの布きれが採れなかったのか。いまとなっては真相はわかりません。でもせめて、そでは、そでだけは、節約せずにつけてほしかった……。

そで問題で躓いていちゃあだめだ! なみだをふいて、次は2000部限定・特価299元(当時)の『藍宇』グッズセットです。「藍宇的北歐」さんによればその全貌は、こんなかんじになっております


これはたぶん、腰巻的なもの。

藍宇145 (1) -1.jpg藍宇146 (1)-1.jpg


そして『藍宇』ノートブック(罫線無し)。

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とどめは2002年版立体卓上カレンダー。
完成図がわからないので如何ともし難いのですが、これ実際に組み立てるとどういう形状になるのだろう。

【JANUARY 2002】





【FEBRUARY 2002】





【MARCH 2002】





【APRIL 2002】





【MAY 2002】





【JUNE 2002】





【JULY 2002】





【AUGUST 2002】





【SEPTEMBER 2002】





【OCTOBER 2002】





【NOVEMBER 2002】





【DECEMBER 2002】





カレンダーが収まっていた箱。





スチルの裏面に各月のカレンダーが印刷されています。2月が「Februry」になっていたりするあたりは大目に見てください。スチルとカレンダーは映画の時系列に沿って組み合わされているというわけじゃ無いのですが、6月はやっぱこのショットしか無いし締めの12月もやっぱこれだろという気がします。その点、加長版DVDみたいなものを勝手に作って勝手に出して怒られてしまう会社にしては良い仕事です。自分の生まれ月セプテンバーが初夜の事後シーンになっているあたりも個人的に褒めてやろう。


これまで「伝説」としてしか知る術の無かった魅惑の藍宇グッズワールドをまのあたりにし、手に取ってみて、2001年から2002年にかけてたしかにあった熱い時代を、僅かながらも追想することができました。
貴重な機会を下さったSさん。
あらためて、ほんとうにありがとうございました。


人類に災いをもたらすために創られた女パンドラが、けっしてあけてはならぬといわれた箱をあけたとき、ありとあらゆる厄災がこの世に飛び出したけれども、ただひとつ「エルピス(Elpis)」だけは箱のなかにとどまったといいます。
予兆、期待、あるいは希望と訳されるエルピスは、災い多き世界にあってつねにわたしたちに寄り添いつづけるものといわれています。
エルピスの真の姿が善なのか悪なのかということについては諸説あるようですが、すくなくとも『藍宇』という匣の奥底にわたしがみつけるものはいつだって文字どおりの「希望」。
それそのものです。
災い多き世界にただひとり取り残され老いてゆく男にとって、夭折の青年が、屹度そういうものであったように。

| 10:47 | 藍迷。 | comments(4) | - |
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